押入れの中

ちびさん、部屋に麻糸(電線のつもり)を張って、折り紙のつばめを貼りつけたりしている。自分も、つばめになっている。



いつかそういうことをするようになるとは思っていたんだが。
「ここ、ぼくの家、ぼくの部屋なの」
と、押入れにもぐりこむ。
あいにく、
押入れはものがいっぱいで、ちびさんがもぐりこんだ分だけは、何かが押し出されることになる。
押入れにもぐりこんで、戸を閉めたまではよかったが、そのあとでなだれ落ちた毛布の類が、戸をこわす。戸が歪んだまま開かなくなり、ちびさん、なんとか隙間から、足とお尻は出したが、残りが出せない。あわれな格好で、足ばたばた。
やれやれ、
戸が壊れるの覚悟で、なんとか全部引きだした。

隙間から手足をつっこんで、なだれた毛布を奥へ押しやり、歪んだ戸を叩いて蹴ってなんとかまっすぐにして、開け閉めできるようになった。

いつまで無事だろう、この家。


友川カズキ 井戸の中で神様が泣いていた