夏休みの終わり

宇和島に滞在中、息子は毎朝4時半に起きて、ひとりでホテルを抜け出して、駅で始発列車から撮っていた。夜も最終列車を撮りに行ったりしていた。そんなに好きか。

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15日。帰る。途中、伊予灘のあたりで、また山に登る。少しの距離だというので、ついていく。はじめての知らない道、それも狭い農道を迷いなく歩くことよ。彼のスマホにはそういう情報がつまっているらしいのだ。列車を見下ろせるポイントで、しばらく待っていると、もうひとり60代くらいのカメラをもったおじさんがやってきた。息子の三脚は低くて、夏草を越えられないから、三脚をあきらめたところに、おじさんは高い三脚を立てた。挨拶して、それからふたり黙って、列車を待っている。
この子は、半世紀のちにも、このおじさんのように、ここにこうしてあらわれるのかしらと、思った。その頃は私は死んでいるな。

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一緒に遊んでもらえるのも、あとわずかのことです。

道沿いの山の斜面には、乱雑に白百合が咲きちらばっていた。

広島にもどって、畑に行くと、つぼみだった百合がきれいに咲きそろっていた。鹿に食われなかった子たちは、咲いたのだ。でも留守の間、鹿子たちやってきてたんだな。糞が3か所。あれこれ荒らしている。鹿子は現場主義である。網が張り巡らしてある、ぐらいであきらめない。たぶん鼻先で、網を片端からもちあげてみて、潜れそうなところを見つけて入ってくる。杭を立ててふさぐ。
その後、この数日は来た気配ないけど、どうでしょうか。油断できない。

そうしてたった10日間の夏休みが終わった。息子は、終わらない宿題と、休み明けの数学化学生物の試験を前に、撮ってきた鉄道写真眺めながら、余韻にひたっていたが。
最高の夏休み、だったらしいのでよかった。

息子は愛媛で暮らしたいと言ってる。高校生の私が愛媛を出たいと思いつめたのとは逆に。不思議な気がする。もしもいつか、彼が愛媛で暮らすのなら、ついて帰ってもいいかな。

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