ピアノな一日

子ども、今日はピアノの1日だった。
朝、近所の福祉作業所の納涼祭で演奏する。
「勇気100パーセント」と「エリーゼのために」と短いジャズ2曲「カーネル・ストリート・ブルース」「ダウンタウン・ビート」。

作業所に行くと、去年同じクラスだったTくんのお母さんが、そこでスタッフしていて驚いた。うちの子とTくんとは2歳のころに、言葉の遅い子どもたちのための保健センターの教室で一緒だった。その後会うこともなかったのだが、去年同じクラスになった。Tくんが抱きついてきて困る、と最初のころ子どもは言っていたが、いやというふうでもなく、その後は何にもきかなかったが、Tくんのほうは、どうやらうちの子が好きだったらしい。休み時間、それぞれに孤独なふたりは、教室でノートに絵をかいて過ごしていたが、Tくんにはうちの子が一緒に教室にいるということが、それだけで心強いことらしかった。
去年のクラスはたいへんだったね、って話をしていた。Tくんもたいへんだったらしい。言葉が言えるのが遅かったし、いまもうまく呂律がまわらないのだが、毎日泣かされて帰ってきていた。
というような話をしながら、ふたりで手をとりあって、なんだかうるうるしてしまった。
Tくん、いまはクラスも別れて校舎まで離れてしまって遊びにゆけないとさびしがってる、って言う。

子ども、いじめられると、いやだというが、人の好き嫌いは言わない。仲良しもいないが嫌いな子もいない。誰の味方でもなく敵でもなく、というふうなのだが、もしかしたら、それはそれで、誰かの役に立っていたりするのだろうか。

それで、奥でおしゃべりしていた私は、子どもの演奏を聞いてないのだが、子ども、花束もらっている。もみじまんじゅうももらっている。しかもそれに、あとで気づいたのだが、実に丁寧なお礼のお手紙までついている。
えええ。どうして。
お礼を言うのはこちらのほうなのである。貴重な体験させてもらって。

帰り際、玄関口で、施設の利用者の近所の青年が、会うといつも「がんばってねがんばってね」っていう彼が、「ありがとうねありがとうね」って言ってくれた。Img_4994



それから街なかへ移動。途中、マックでお昼ごはん。
こういうときに限って、やるんじゃないかといやな予感はしたんだが、やっぱり。舞台衣装の白いシャツにハンバーガーのケチャップ。……まあ、裾のほうにちょっとだし、目立たないし、と思ったら、ズボンにべったり。
拭いたらわかんないか。ズボンは黒いから、どうってことないけど。

すこし時間があるので、原爆ドームと電車の写真撮りに行く。原爆ドームの前を電車が走っている絵をかくつもりらしく、その取材。
暑いし、私はすぐに飽きたが、子ども、電車が通る度興奮していた。それで電車はけっこうひっきりなしに通るのだ。いろんなところからきたいろんなかたちのが。


「ピアノ、失敗したらどうする」って子どもがきくから、
失敗してもほめてあげる。キスしてあげるよ、って言ったら、
「じゃあ、失敗しなかったら、キスとアイスクリームっていうのはどう?」
って言う。もちろんいいよ。
ピアノ発表会はジャズ2曲。ベストじゃないけど、かなりよかった。

本当に、今日はかなり、きみは立派だった気がする。

それでアイスクリーム買って、やれやれ終わりって、ほっとしたいところなんだけど、1か月後にはコンクールがあるっていう。
なんのたくらみか行き違いかわかんないんだけど、一夏に発表会とコンクールがたてつづけにあって、その両方に出ることになってて、しかも別の曲をやるっていうんだが、コンクールのほうのクラシックの曲、まだ全然弾けない。「きみなら大丈夫」って先生は言って「うん」って子どもはうなずいてるけど、私にはさっぱり理解できない難しげな譜面ですが、……これから特訓すればってことですね。

なんかなんか、忙しげな夏だなあ。