ひなどりは愛です

学生時代のすべての講義ノートは、六畳一間の暮らしには邪魔で、引っ越しも転々しているうちに、すべて処分したが、卒業後に、仕事を長引く風邪のせいにして休んで、もぐりで聴講した仏文の集中講義のシモーヌ・ヴェイユ講義ノートだけは、ワープロで打ち直してもっている。

「天秤 わたしたちの空」のコラボをしているとき、そのノートがとっても役に立った。明日「天秤」の批評会してくれるというので、
シモーヌ・ヴェイユの生涯と思想」について、レジメつくっているんだけど、いまのいま。(相当あせっている)。
で、またそのノートが机の上にあるんだった。

カルカッソンヌの一夜のくだり。
ヴェイユは、ジョー・ブスケ(1879-1950)というシュールレアリズム詩人と出会う。ブスケは戦争で下半身不随。麻薬中毒
彼らは語りあったらしい。ノートには、

「「傷」を自分のものとして受け入れる。世界のはじめからあった傷ではないか。世界のすべては自分と同じように傷ついている。」

それで、ブスケへのヴェイユの手紙があって、ひなどり、ここで出てきたんだな。時間がないので、本を探せないので、講義ノートそのままだけど。このページは、どれだけ読み返してきたかしら。

「私を通して他の人々のために
 あなたを通してあなたの兄弟たち(同じく傷ついた人たち)のために
 あなたは誰よりも世界の現実が自分にとって実在となる特権を持っています
 多くの人にとって悪夢であるにすぎず、戦争という絵の背景であるにすぎないことを、多くの人をとらえてきた不幸を、あなたはパンセによって生き直そうとした
 けれど完全には決意していないでしょう
 あとはただ卵の殻を突き破ればいいのです
 ひなどりは愛です神です
 あなたは自分の肉体に戦争を持っている
 多くの人々は忘却によって過去に葬ってしまった
 不幸について考えるためには不幸を自分のなかに深く深く持たなければいけない
 思考がそれを見つめる力を、ひたすら待つこと、忍耐して待つこと
 人間は有限性の痛みを生きる存在です
 あなたが卵の殻を割って外に出たときにあなたの体のなかの弾丸に許しが与えられるのです。その弾丸を与えた世界に許しが与えられるでしょう」