先生がいなくなった

子ども、夏休みが終わって、学校に行ってみたら、先生がいなくなっていた。

プリントによると、担任の先生は「一身上の都合で」夏休み中に退職してしまったのだ。
かわりに、子どもの言葉によると「年とった、こわい、女の先生」がやってきた。

先生どうしたんだろう。新任で子どもにふりまわされてて、採点間違いも多くて、はらはらしたけど、我が家ではけっこうアイドルだった。かわいいフリーズ先生。子ども、夏休みにつくった「いろいろな発電所」の本、先生に見てもらえなくてつまらない。先生が、子どものころ、本を書く人になりたかったって聞いてから、先生は本が好きだから、ぼくの本を見てもらおうって、思ってたんだよな。

きっと、あんたたちがいじめたから、先生逃げちゃったんだ。いや、ちがうな、あんたたち、あんまり悪いから、先生に捨てられちゃったんだよ。
だって、2年×組ひどかったよ。授業中もうるさいし、先生の言うこと聞かないで、こうしましょうって言っても「いやだ」「いやだ」って言ってばかりだし、暴れるしふざけるし、だからもう、先生やめるって思っちゃったんだ。
先生は先生になったばっかりだったんだよ。大学でがんばって勉強して、難しい試験受けて、いい先生になろうって思ったはずなのに。もしも2年×組がいい子たちだったら、先生も、やっぱり先生になってよかったなって思って、先生やめなかったかもしれないのに、あんたたち見てて、いやになってやめたんだよ。だとしたら、2年×組の子どもたちは、先生の人生を狂わせたっていうことになるよ。ひどいなあ。

「でも先生は一身上の都合でやめたって書いてあるよ。」
「それは先生やさしいから、2年×組の子どもたちのせいにしないで、自分のせいにしてくれたんだよ。」

子ども、涙ぐんでる。
「ぼくもすこしだけど、ふざけた。だから先生いなくなったのかな。でももっとうるさかった子もいっぱいいる」
それは知ってる。いや実際、気の毒なほど大変なクラスだったと思う。
「だからさ、ふざけてると、たいへんなことになっちゃうってことだよ。ふざけてた子たちはこれからはどんどん叱られるよね。先生いなくなって残念でしょう。先生に捨てられたって思ったら悲しいでしょう。でもふざけてたら、本当に捨てられちゃったりするんだよ。だから、これからはもうふざけないようにする。わかった?」
「うん、わかった」

わかったからって、ちょっと目を離したら、すぐに宿題投げ出して、遊んでいるのは変わりがないんだが。

さて「年とった、こわい、女の先生」って、どんな先生だろ。

2年×組から解放されたフリーズ先生。
愛すべきフリーズちゃん。
4か月間ありがとう。よい人生を。