のりめたんへれ

夕方、
「いじめられた。ぼくは2回も泣いた」
と学校から帰ってきた子どもが怒りながら言う。

近所の同じクラスのS君とMちゃんと、3年生のS君に、いじわるされたらしい。通せんぼされるとか、その程度のことではあるみたいなんだが。

バスを降りたあと、連中にからまれるのがいやなので、子どもはいつも走って帰る。家まですごい坂道なのだが、走る。ぶじに走り抜けたよ、と汗だくになって帰ってくる。が、今日は逃げそびれたらしい。

どうしましょうか。SとS(3年)の親に言ってって言う。でもMのところは言わなくていい。Mの兄が話を聞いてくれて、親に言っとくって言ってくれたからだという。
SとS(3年)。これはもう、どちらも、すでに一度は親に話してるんだけどな。

むずかしいなあ。
たぶん、いじめるほうにはそんなに悪気はないかもしれない。Sは日頃から姉にいじめられているし、Mは日頃から兄にいじめられている。自分たちが兄や姉にかまわれるように、かまっているだけかもしれないのだが、私の子どもにとっては大迷惑なのだということなんだろう。

学校の連絡帳にも書いてって言う。
まったく気が重い。去年から連絡帳に書く内容って言ったら、クラスのだれそれに叩かれたとか、何年何組のだれそれにいじめられたとか、そんなことばっかりで、なんか先生に告げ口してる子どもみたいな気分にさせられる。親の仕事ってこういうことか? まあ、しょうがないのか。

だけど、現場を見てないから判断しづらいし、書きづらい。
あのさ、自分のことだから自分で書こうか。
すると子ども、書く、と言う。

「いじめられて、いじめかえしたり、悪口言われたからって、自分も悪口言ったりしたら、怒りやにくしみがもっとふくれて、二倍にも三倍にもなるから、それはよくないんだ。逃げるか、逃げれなかったら、手紙を書く方がいいんだ」

って言うので驚いた。
はい、その通りだと思います。

それで連絡帳に書きました。親が書くときみたいに小さな字で、せっせと漢字辞典めくりながら。

「お願いですが、学校の帰りに、バスを降りた後、二年×組の、△△△△君と◇◇◇◇さんと、三年×組の□□□□君が、ぼくを一番後にしてずるをしたり、ワザを使用してつき止めたりしたので、ぼくは二回も泣きました。これがつづくようだったらバス通学を取り消して自動車で行きます。みんなに、ぼくを馬鹿にしたり、いじめたり、からかったりしないように言って下さい。」

いいでしょう。先生にお願いして、それでも、みんなのいじわるがとまらなかったら、親に言いにいってあげる。それでも変わらなかったら、子ども会に言ってバス通学から外してもらう。そうしましょう。
要するに、「ぼくに触れるな」って、言いたいんだよな。

「ノリ・メ・タンヘレ」っていうんだよ。われに触れるな。ホセ・リサールの小説のタイトル。フィリピンでは高校生のテキストだ。大きくなったら、読みなさい。