口は災いの

夕方、担任の先生から電話。トラブルがあったらしい。
クラス対抗の長縄オリンピックの日で、息子は5組のWくんと話していた。
5組の目標は400回ときいて、「でも、学級崩壊してるクラスだから、目標達成は難しいと思うよ」と息子は言った。
「そんなことはない、400回行けると思うよ」とWくんは言った。
ふたりの話はそれだけのことだったのだが、近くでそれを聞いた同じクラスのOくんが、5組のAくんに、
あいつがおまえたちのクラスのことをばかにしてたぞ、と言った。
すると5組のAが怒って抗議にやってきた。
それで大騒ぎ。遠くからはもうひとりのAが「ばかにするなー」と叫んでいたらしい。
担任の先生が話を聞いてくれたわけですが、Aくんはうちの子に「ばかにしたことを、5組のみんなの前であやまらせたい」と言い、それはさせられない、と先生は言った。Wくんとのふたりの話のことなんだから、と。
言われたくなければ、言われないようなクラスにあなたがしなさい、とも言ったらしい。
だいたい5組の学級崩壊の原因が、そのふたりのAなのであった。
逆切れすんじゃねーよって話だが。
Wくんとのふたりの会話で何にも問題がないことを、わざわざ悪口にして、触れ回ったOもどうかしてるし。
でも、他人のクラスについてあれこれ言うというのは、軽はずみな発言だったわけで、先生もかばいきれないこともあるよ、とちょっと息子は釘をさされて、泣いたそうだ。

帰ってきた息子は言った。「口は災いのもと、と思い知った。」

たとえば、競馬でどの馬が勝つか負けるか、自由に話す権利はある。きみがWくんと話したことは別になんにも悪くない。Wくんは絶賛学級崩壊中の5組からきましたーって、私に自己紹介したこともあるし、ふたりの関係では問題ない。
でもまわりに、誰がいるかは、気をつけなきゃ。Oくんがどういう子かはわかってるんでしょ。
そこまで用心深くなれというのも、難しいよなあとは思いながら。
世の中はこういうこともあるのだから、気をつけなさいね、というほかないのだが。

5組のふたりのAに、またからまれたらどうしようと、こわいというから、もしも、何かあったら言いなさい。うっとうしかったら、もう卒業式まで学校に行かなくてもいいよ、と言った。
こんなめちゃくちゃな子どもらのなかに、6年間通わせてきた心労が、私もふっと口をついて出た感じ。

しかし、息子はよい経験をさせてもらっていると思う。
私が大人になってから苦しんだ人間関係の悩みの基本的なところを、はやばやと学習している感じ。

さて。5組は、ピアノ仲間のYくんが通えなくなっているから、よほどひどい学級崩壊だと息子は認識している。ふたりのAのせいで、Yくんが受けられなくなった授業、行けなかった修学旅行のことを、息子は知っている。そんなクラスが長縄で団結できるなんて信じられないというのは、それなりに筋の通った予想ではある。
でもまだ読みが浅いよ、と私は思う。5組の担任は、息子が3年のときの担任で、その年、息子たちのクラスは、学校で一番だった。息子がクラスの女の子たちにいじめられていたさなか、それなりにひどいクラスだったが、それでも長縄はいい成績だったのだ。
果たして。5組は目標の400回を達成した。