臨時休校

午前7時、大雨洪水警報出ていて、学校は臨時休校。
子ども、1日ひとりで遊ぶ。
辞典読んだり、工作の本とか、電車の模型とか、引っぱり出して遊んでいたはず。

が。
そろそろおやつにしようかと思って、階段降りていくと、子ども、へんに狼狽している。

何をやらかしたのか。
洗面台の下あたりと、台所と、水びたし。
畳の部屋も一部濡れてる。

しかし、水、ではないな、ねとねとしている。
訊いても子ども、「あの」「えっと」「その」
と、つぶやくだけで、わかんない。
これは何か、何をたくらんだのか、どんなことを頭のなかで考えたのか、どんなふうに手足を動かしたのか、ひとつずつ言いなさい。

すごーく時間をかけて、ようやく少しずつ、ことがあきらかになっていった。

床一面にばらまかれた液体は、ママの化粧品らしかった。洗面台に3本置いてあった。3本とも。
(義母さんが何年も前にくれた化粧水とか日焼け止め、私が顔にもの塗る習慣がないので、ほとんど使わすに、置きっぱなしだったのだが。)

子ども、「掃除しようと思って」って言う。
意味不明である。
ふだんお片付けもできない子が、なんでいきなり掃除しようとか思うわけ。ほんとうのたくらみを言いなさい。

子ども、答えられないが、私はひらめいた。
図書館で借りてきた工作の本に、空き瓶や紙コップをつかって、風車をつくるというのがあった。化粧品の瓶だといいにおいがするよ、って書いてあったわ、そう言えば。

訊くと、うんうんとうなずく。ところが瓶には中身が入っていて邪魔だったんだな。それで床に撒いたっと。
「これで掃除したら、いいにおいするかなあと思って」
中身を撒いて、それから水も撒いた。
ああ。

ところで、机の上も水浸しなのはなぜか。
「ああ」「えっと」

子ども、答えられないが、私はひらめいた。
ミニカーのタイヤの跡。
以前、キャップやコインや輪ゴムやミニカーのタイヤに、絵の具をぬって、それをぺたぺた紙においたり、ころがしたりして、版画して遊んだことがあった。
水たまりを通った後、タイヤの跡がすじをひくのを再現したかったんだな。
子ども、うんうんとうなずく。

それで、そこらじゅう、化粧水まじりの水でびしょびしょにして、自分で後始末ができなくなっている、というわけだった。

怒る気力も失せた。

雑巾で拭くしかない。お化粧してもらった床、べとべとしなくなるまで、ひたすら拭く。
さぼるな。

むかし、この子どもは、廊下におもらしして、そのおもらしの水たまりのなかにミニカーをつっこんで、
「あめのひのブッブー」
と喜んでいたが、

ニベアククリームを何台ものミニカーの上にべったりとぬりたくって、
「ゆきのひのブッブー」
と喜んでいたが、

あのとききみは、まだ3歳くらいだった。ミニカーのタイヤで版画したのは4歳のときだ。いまきみは8歳なんだが。

大丈夫だろうか、この子ども。

大雨洪水警報の1日が暮れていく。外はもうとっくに雨あがっている。