パヤタスの夕暮れ


 フィリピンのパヤタスという地域にゴミの山があるのだが、そのゴミ山のふもとにあるフリースクールの校長のレティ先生から、あれこれの用件の手紙と一緒に、すこしばかり早いクリスマスカードが届いた。以前に一緒に過ごしたクリスマスのことなど、なつかしんでくれている文面に、こちらもあれこれ思い出して、なつかしくてたまらない。

 妊娠出産以来、しばらく行けていないが、それまでは10年近く、毎年訪れて半月から1か月ほど滞在していた。でも訪れるのはたいてい雨季、日本の夏休みの頃で、クリスマスの頃に滞在したのは1度だけだ。それももう10年ほども前。
 乾季、ゴミの山は自然発火の炎が燃えて、煙が教室まで流れ込んできていた。放課後は、先生たちも子どもたちも毎日大騒ぎでクリスマス・パーティの準備をしていた。教室の柱を幹にみたてて、凧糸を放射線状に張って、クリスマスツリーをつくったり、ダンスの練習をしたり。
 夕方になると、子どもたちが一緒に水汲みに行こうと誘いにきた。バケツをもって近くの井戸に行くと、子どもたちの列ができていて、順番がくるまで遊びながら待った。
 ある日、水を運んで学校にもどったとき、<えらかったね> 空耳に死んだ母の声を聞いた。

 あの夕暮れは、やさしかった。