このさびしさはたからもの

死んだ友だちの原稿の整理をしているんだけれども。過去のメールをさかのぼるのが、なかなか大変。ときどきに記録してきたと思うんだけど、それでも、やっぱり変えます、とか、えっ、この詩は次の連もあったのかとか、見落としもあるから、チェックすべきだなと思って、してるんだけど、途中で泣けるので、毎日すこしずつ。

忘れていたことも多い。2012年、上野にツタンカーメンがきたとき、美術館に来たのだ、彼は臨時の仕事を見つけて上野公園の清掃にでかけている。天皇が来るから、ブルーシートのテントを撤去する仕事。とはいえ小屋主たちは、自分たちでさっさと引き払っていているのだが、天皇一過のあと、気になって見に行ったら、小屋はもとどおり再建されていたという話。あの小屋の人は仲間に慕われているとか、なんかそういうことを知っていた。

柳美里の「JR上野駅公園口」に似たような場面があって、本で読んた記憶かと思っていたけど、えびなさんから聞いた記憶だったんだな。

それにしても。きれぎれのメールが伝えてくることの膨大さ。

えびなさんが、最後に自分でまとめてくれた短歌180首のほかの、捨てられたり、命乞いが間に合わなかったり、忘れられていたりした短歌さんたち、ひと山は、どうしましょ。

きれぎれの詩篇。きれぎれの詩論、歌論。人物や出来事や、街の話。とても短くて前後もわからないから、何の話かわからない共感、反発、あれやこれや。

 あれは私が、フィリピンのゴミ山の学校の原稿を、書いていた頃かな。昔、パアラランに来ていた女の子が作文を書いて、「それが私の人生です」っていうタイトルだった。私がそう訳したんだけど。簡単な英作文。すると、えびなさんが、そのタイトルで詩を作った。その詩の4連めが2通りあって、どちらを残そうかを考えたのが今日の仕事。
ブタと飛行機雲と、飛ぶのはブタでしょう、やっぱり。(飛行機雲のほうは以前にUPしたと思うんだよね)
このさびしさはたからもの。

 

それが私の人生です   蝦名泰洋

 

歌をうたって日が暮れる
それが私の人生です
文字を覚えて夜が明ける
それが私の人生です

 

ごみはいつしか土になり
土には草が伸びるでしょう
明日咲く花のあたたかい
名前を三度くちずさむ
それが私の人生です

 

窓をひらいて鳥を見る
それが私の人生です
夢に見るのはほしいもの
それが私の人生です

 

舟をこぐのは弟で
虹をかくのは妹で
ともだち親子ブタが飛ぶ
このさびしさはたからもの
それが私の人生です

 

それらがみんな人生です

  2013.3.18