続・野獣派

子ども、家に帰ると、次は何して遊ぼうと、頭のなかは忙しいから、学校であったことなど、よほどでなければいちいち報告もしないし、こちらもいちいち聞かなかったのだが、ここんとこの野獣派女子の動向が気になるので、ちょっといちいち聞いてみると、
「ああ、今日はパンツを脱がされた」
って言う。

いつもの6番女子と32番女子と、それからオプションで4番男子に、休憩時間に着替えてるときにつかまえられて脱がされた。

ふむ。野獣派のすることとしては、自然ななりゆきか。

やめてって言ったの?
「一度は、言ったんだけど……」
叫べよ。

それで、パンツのなかのリス見られたの?
「あ、一瞬ね」
まったく。うちの子のリス見て、無事でいられると思うなよ。
言いつけちゃる。

連絡帳に書き書き。ひととおり報告のあと、
このようなことがつづくようなら、親ごさんとお話したほうがいいかしらと思っています。
と書き加える。

今度何かあったら、ぼくのお母さんが怒ってるって言え。



こういう子らは、私が子どもの頃にもいた。
子どもだったころ、私はまわりの女の子たちの言動はずっと謎だったけれど、今ごろになってようやくすこし理解できる。
たぶん、そろそろ女子は、女子同士の友人関係も泥沼の感情生活に突入していくのだ。

思い出した。
ある日突然、誰とも口をきいてもらえなくなった。小学校の高学年の頃。
それが何かの制裁であるとか、いじわるであるとか、たぶん常識的にはそう考えるんだろうが、
私は思った。口をきかないで遊ぶ、というゲームがはじまったんだ。

アスペルガー症候群は、常識よりも、自分ルールが優先する、と本には書かれていたりする。)

それが1か月つづいたのか2か月つづいたのか、もっと短かかったか長かったか、
もうゆるしてやろうか、
と、誰かが言って、それではじめて、私は制裁されていたらしい、
とわかった。
でも、どんな理由で口をきいてもらえなかったのか、ついに知らない。

たぶんそこには、女の子たちの感情的な理由があったはずなのだが、アスペルガーの子どもは、そういうことはわかんないのである。誰も説明してくれないし。

謎な世界を手探りで生きていくんだねえ。

でも、わかんないほうがむしろしあわせなことかもしれなかったね。女の子たちの泥沼の感情生活。ろくなもんじゃねえ。