どたばた農場

「みなさんへ

けさは、はしりまわらずに
しずかにほんをよんでまちましょう

       りくしせんせい」

と書いた紙が、襖に貼ってある。黒板らしい。
私は机に向かってすわらされて、ひらがなとすうじの書き取りをさせられている。ここははねる。ここはまるく。いつも言われているらしいことを、言いながら、赤鉛筆を手になおしていく。ときどき花まるをくれる。

あーだるい。だんだん腹が立ってくる。子どもえらそうだし。
せんせいうるさい、せんせいもうやだ、あれこれ文句いいたいが、
子どもが学校で真似したら困るので、我慢する。

授業中じっとしていない子どもの気持ちをわかろうと思ったら、
生徒になって生徒の席にすわってみることだな。
もういや、もう我慢できない。もう飽きた。
せんせい、きゅうけいにしよう。だいきゅうけいだよ。

私は畑に行く。にげなきゃ。

玉葱は、らっきょうの仲間みたいなのもあるが、それでもひとふくろ収穫できた。にんじんは異様なかたちだが、にんじんである。土をほるとじゃがいも出てくる。セロリは巨木になりつつある。かぼちゃの種、適当にまいといたら、ぼこぼこ芽がでている。きゅうり、ミニトマト、なす、おくら、ピーマン、ゴーヤ、育ってくれるとうれしい。
こんなにいいかげんにしか世話してないのに、毎日スープに入れる野菜がとれるのはなんだかすごい。痛ましくて、ひとさまには見せられないにんじんの奇形っぷりをしばらく眺めた。
すきまにひまわりの種をまく。フウセンカズラの芽もでている。アサガオは本葉になった。

農場主は、不在地主となってひさしい。こないだ来て、「どたばた農場」という名前だけつけてった。