絶縁状

小川糸さんの本『ツバキ文具店』は代書屋さんの女の子の話。ポッポちゃんは、依頼を受けてお手紙を書きます。ラブレターも、借金を断る手紙も。天国からの手紙まで。いろんな人になりかわっていろんな文体、いろんな書体の手紙を書いていきながら、人と出会い、自分自身と和解していく爽やかな物語。代書する手紙のなかには、絶縁状というのもあって、それよ、私がいま書きたいのは、と思った。

昔の知り合い。やりとりのなかで、これは絶交しよう、と決めて、絶交宣言のあとは、徹底的に無視していたら、そのうち静かになって、それはそれで絶交成ったみたいなので、もう蒸し返すつもりはないんですが、言ってやりたいことも、言わずに我慢したこともひと山ある。それがむかむかと、胸の底に溜まっている。
なので、徹夜して書いた。絶縁状。

せっかく書いたので、読んで欲しいけど。でも、もしこれを出したら、これを理由に、また何だかんだ言ってこないとも限らないし、男の自尊心なんてやっかいきわまりないし、せっかく向こうは言いたい放題言って、自分なりに理由をつけて納得して、黙っているのだから、そこにまた石を投げ込むようなことはしないほうがいいに決まっている。出しませんけど。
でも、書いたらずいぶんすっきりした。

「メールは、たいへんに侮辱的な内容でしたけど、もしもそれを侮辱と気づかないとしたら、その鈍感さは最悪だわ。私はあなたを嫌いです。」

(プライベートな話は略)

「お金はほしいと思っています。でも、ボランティアのことも、体が大変ななか、せっかく本も売ってあげたのに、なんて恩着せがましいことを言わなくちゃいけないのなら、してはいけません。そうであっても、黙っておくのが礼儀です。それができないならボランティアをしてはいけないと私は思っています。だから、あなたからの支援はお断りします。ボランティアは、どこか別のところでなさってください。」

(後略)