時間割

夕方、学校から帰ってきた子ども、着替えも宿題も明日の時間割も、すべて、声かけしてやらないと自分ではできない。電車であるとか、お絵かきノートであるとか、図鑑であるとか、目にはいったら最後、たましいはもう吸われていって、こっちにもどってこないのだ。
で、毎日毎日、明日の時間割をみてやるんだが、連絡帳に、書いてない。

あ。
子どもの顔から色が抜ける。ほんとにそんな感じだったんだが、
ぼく、本をつくるのに忙しくて、書くのを忘れた、という。
本、というのは、自由帳に書いている絵とお話のこと。壊れた街が何ページもあって、「釜石工場」の看板が倒れていたり、広島の原爆ドームの絵があったり、「東京もぐちゃぐちゃ」の書き込みがあったり、している。それでトムとジェリーは日本脱出して、アメリカのニューヨークまで行った。
という話のつづきを書いてたんだな。

学校に電話をかけましょうか。でも私は電話がきらい。あんたのかわりに電話をかけるのはいや。自分でやって。
もしかしたら子ども、自分でどこかに電話をかける、というのははじめてではないだろうか。
やってみようやってみよう。まず、何年何組だれそれです、っていって、担任の先生を呼んでもらう。それから、ごめんなさい、時間割書くの忘れました、明日の時間割教えて下さい、って言う。それで教えてもらったら、ありがとうございました、って言う。わかった?
子ども、ためらわずに電話をかける。えらいなあ。
無事、時間割確認する。

宿題もなんとかすませる。
鳥、という漢字の、象形文字が複雑で、うまく書けなくて何度も書き直す。そんなもの書けという宿題は出ていないが。

運動公園に、満開の桜見に行く。この花の下を走っていたのは、ほっぺたを真っ赤にしていた小さな子どもだったと思うのに、いつのまに、生意気そうな少年になって。