季節

日曜の早朝、雨の坂道を歩いて帰り着くと、庭の金木犀が咲いていた。

金木犀はなつかしい。
いつも近道していった中学校の裏口の近くの家に、金木犀咲いていて、あの頃の景色が、ふっと胸に流れ込む。
読んでいた本、放課後の図書室、
飼っていた犬、鳩小屋の鳩たち、
夕焼け、行商のおばさん、
……おだやかな日々もあったんだなあ。
荒れて壊れていく印象だけが最後に強烈に残っている家族なんだが、
そのすこし前、不思議におだやかな日々があったんだよなあ。
その頃の記憶につながる、金木犀と、木漏れ日と。
ショーロホフの「静かなドン」を読んでいたことを覚えている。
ボードレールの「悪の華」は、教科書の下に隠して読んだ。

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いま読んでいる本。
福島菊次郎「ヒロシマの嘘」
これは、胸のあたりに血のかたまりが込み上げてきそうな本。
また書きます。