玩具のくるま


   インフルエンザの二回目。待合室で、子どもは、鳩時計の鳩が鳴くのを待っていて、ぴぽぴぽぴぽ、と自分も一緒に鳴いていた。
 夜、おじいちゃんが来ているので外にご飯を食べに行く。注射では泣かない子が、車のチャイルドシートがいやだと泣く。あきれるほど泣き狂う。店のなかでも不機嫌がつづく。それが店の入り口で売っている玩具の車をおじいちゃんに買ってもらったとたんに、心が落ち着いたらしく、行儀よくご飯を食べはじめた。
 そういえば、いつもの気に入りの自動車を持たせていなかった。
 玩具の意味を考える。

  きみの手がたしかに掴んでいる自由あるいは空とぶ玩具のくるま (野樹かずみ)