日本製


 昨日はいい天気だった。午前中、年に1度の床下の定期点検。床下にもぐってもらうためには畳を上げねばならず、畳をあげるためには、いまや物置と化しているベビーベッドを動かさねばならず、ついでに掃除機もかけた。床下異常なし。

 午後、街へ降りるついでに、義母からもらったそごうの2千円の商品券の有効期限が迫っているから、そごうで買い物をすることにする。でも、何を買おうか。
 まず、子ども服売り場に行ってみたけれど、来年には着れなくなる服を、1着5千円とか1万円で買う勇気はない。靴も、子どもが今はいている靴の10倍の値段がついたものがならんでいる。そんな靴をはいて水たまりにつっこんで行かれた日には泣いてしまうと思う。
 次におもちゃ売り場に行ったが、このまえもおじいちゃんおばあちゃんに買ってもらったばかりだから、やめよう、と通り過ぎる。
 それから困った。何を買っていいかわからない。売り場でまず目につくのは衣類だが、夫も私も、着るものにはとんと関心がない。鞄もいらない、靴もいらない、貴金属もアクセサリーもいらない、だいたい、ここで2千円程度で何が買えるんだろう。

 ああ、買い物って難しい、と歩き疲れてしまいそうになったころ、そうだ、帽子がほしい、と思いついた。ところが帽子も子ども服ほどの値段がする。ひるんだけれど、ほかに買うものもないので、選ぶことにする。少々汚れても平気で、洗濯機でじゃぶじゃぶ洗えそうな丈夫なもの。すこし大きめですっぽりかぶれるもの。
 5千円ほどの茶色い帽子を買った。色褪せて擦り切れるまでかぶってやろう。そごうの商品券とその他の商品券とあるだけ全部使った。帽子のタグに「日本製」とあるのが、なんだかとても新鮮だった。「すごいよ、これ日本製だよ」と、思わず言ってしまった。

 子どもが、その帽子をかぶって「ぼうし、かわいい、ぼうし、かわいい」と歩き回る。ぶかぶかの帽子が、虚無僧みたいだよ。自分の帽子はかぶらせても、すぐに投げ捨てるくせに。