『ガイドブック アスペルガー症候群』

  『ガイドブック アスペルガー症候群』トニー・アトウッド著、東京書籍 読了。
 これはとてもいい本。人生の謎が解けていく快感だった。
 
 親たちのことはもういい、子どもがこれから、学校という「ジャングル」(という著者の表現に賛成)や、「狭量で残酷なティーンエージャーの仲間」(この表現も的確と思う)のなかを、なんとか切り抜けていかなければならないことを思うと、200人から300人に1人はいるという、決して少数ではない、アスペルガー症候群への理解はすすんでほしいと思う。身近にアスペルガー症候群の人と関わる機会のある人には、ぜひ読んでほしい本。
 
 成人のアスペルガー症候群の人の15パーセントがうつ病(自殺の危険を伴う)になるという統計が、理解できるだけに気になる。どんな絶望に襲われても、とにかく生きのびること。豚になってもいいから、生きていなさい、とだけは伝えておこう。
 
 「歩き出すのが遅かったり、しゃべり出すのが遅かったりするのと同様に、人付き合いができるようになるのも遅いのです。普通の人より何十年も遅いことがあります」
 「アスペルガー症候群の人は成長を続け、最終的に社会性、会話、ほかの人の考えや感情を理解する能力を改善し、自分の考えや感情をうまく、より微妙な言い回しで表現することができるようになります。その成長をたとえていえば、何千ピースのジグソーパズルを、箱の完成図を知ることなしにはめ込もうとしている状況に似ています。それぞれの小さな孤立した部分はできてきますが、全体の「絵」はまだ明らかではありません。いつしか、それぞれの「島」は大きく成長し、全体が見えるようになり、最終的にパズルが完成します。このようにして、対人行動のパズルを解決するのです」
 
 パズルの比喩はものすごくよくわかる。
 人間関係のわからなさは苦しかったし、5年10年たってからようやく理解したり、というもどかしさだし、すべて取り返しつかないが、それはそれで、「にんげんばんじさいおうがうま」だ。他の人が10代や20代で苦もなくできるようなことを、ようやく理解するのに、たぶんその倍くらいの時間はかかっているんだけれど、でもたしかに、生きるのをやめなければパズルは埋まっていくし、その度に発見があって、年とるほど内面に自由な感じがひろがっていくのは、うれしいことだと思うのだ。