呪文

たいてい、夢のなかか霧のなかにいるような子だから、呼びもどすのが大変。ごはん、と呼んだって返事はかえってこない。だんだん声が大きくなり、ほとんど私は叫んでいるが、するとようやく霧の向こうから声がかえってくる。「いま、あそんでるんだってばあ!」

そんなことはわかってるってば!

ようやく食べはじめても自分の好きなものしか食べようとしないので、それ以外のものは、私が口に運んでやらなければならない。つくづく面倒なので、茶碗とお椀と皿を三角形に並べて「123で順番に三角形に食べるんだよ」と教えてみた。
すると、どこがどうつながったのか、「いちにちに、げんまいよんごうと、みそと、すこしのやさいをたべ」と、「雨ニモマケズ」のフレーズを呪文みたいにつぶやきながら、まじめに三角形に食べはじめた。
ああ、賢治お兄さん、ありがとう。

規則性を了解すると、それなりにスムーズにできることは多い。
で、ときどきわざと、それを崩してやる。風呂で、体を洗う順番をいつもと違えたら、金切り声あげて抵抗したわ。

夜、パパがいない。ちびさん、「パパはいしきりば(石切り場)にいったのよ」と言う。そりゃまたすごいところに。
石切り場ではなくて、町内会です。500円もっていったから、たぶん、飲んでるから遅いわ。石切り場に行ったのはトーマスでしょうかね。