夏休み特別列車

ほんとうは、私がフィリピンに行っている間、山口でお留守番する子どものために、パパはSL山口号の切符を予約しようとしたんだけれど、あいにく全席売り切れだった。それであきらめて帰ろうとしたとき、駅員さんがよけいなことを言った。「瀬戸内マリンビュー」はどうですか。
夏休み時別列車が出ています。広島から三原まで、海沿いを走ります。

じゃあ、窓際の席がとれるならと、切符を買って、8月8日、早起きしてお弁当つくって出かけたんだが、窓際の席って言ったのに、なぜか通路側の席で、マリンビューとはいいながら、ずっと海が見えているというわけでもなくて、それでも晴れていたら青くてきれいだろうが、曇っていて、なんだかさえない。

それで三原に着いたが、この暑いのに町を歩く元気はなく、帰りはゼロ系新幹線に乗るんだと、パパとちびさんふたりが言い張って、それでたっぷり三時間も駅で待つことになる。(百系なら、もっと早く帰れるのに)
ようやく新幹線来て、乗って帰ると、もう夕暮れ。

たのしかったの、とちびさんは言い、それは何より。こんどはうみにいくの、と言っている。(行くのか。)
子どものころに親しんだ風景を久し振りに見たらしいパパも、楽しませてもらった、と言い、それは何より。

何が楽しいのか、さっぱりわからず、私はやたら疲れている。

電車に乗るためだけに、電車に乗る。

なんて贅沢な無駄遣いだろう。