5歳になった。

ちびさん、5歳になった。
誕生日なので、午後、本屋に行く。本屋に行くと、本を買う、金がなくなる、生活できなくなる、ので日頃行かないようにしているが、ちびさんの誕生日なので行く。2000円ぐらいの図鑑を買ってやるつもりが4000円くらいのを買うことになる。「大宇宙」。星と地球の話ですね。ついでに、自分の欲しい本なんかも買ったりして(見なけりゃ、欲しいと思わずにすむものを)、あっ、というまに、財布のなかの5千円札と千円札数枚が、すべて消える。(1万円札はもともと入ってない)。
これではケーキが買えない。パパの財布もからっぽなので、しょうがない、お金をおろして、ケーキを買いに行く。丸いケーキがないので、長いケーキにする。こちらのほうが安いので助かる。おつりの千円札数枚を、夫婦であさましく奪い合うが、そんなの、きみの知ったこっちゃないわね。

ちびさん、5歳になった。
ゴミの山で、抱っこしたり一緒に遊んだりした子どもたち、マリアは2歳で死んだ。アントニオは7か月しか生きなかった。でもちびさん、5歳になった。なんだかすごい。

ちびさん、5歳になった。
4歳になったときにできなかったこと、トイレで▲することも、おはしでごはんを食べることも、あいかわらずできない。6歳になるまでにはなんとかしようぜ。あと偏食と、ひらがなの書き順。

ちびさん、5歳になった。
昨夜は、私の父がめずらしく電話をかけてきた。そろそろ耳が遠いらしく、電話線をネズミにかじられても、どうせ聞こえんからいいと思っていたらしいが、まあ、直したらしい。ネズミは、私も学生のころ、下宿に出入りされて米も石鹸も食いつくされたことがあるが、父のところのネズミはまあまあ行儀がよく、食べものを漁ることはしないらしい。ネズミがでるような家に住んでいてほしくないんだが、誰がどう言っても、引っ越さない。頑固に、60年以上もまえ、13歳で左官の親方に弟子入りして働きはじめた最初の現場だったらしい、つまり築60数年のポロ屋から動かない。またそのうち、様子を見に帰らなければ。
ちびさん、ものすごい早口で電車の話しているが、じいちゃん何にも聞きとれんよ。

ちびさん、5歳になった。
朝、義母から電話。明日一緒に呉の大和ミュージアムに行こうと、義父が言うらしい。そりゃまた突然な。明日は午後来客の予定なので、無理と伝えると、夕方また電話。明日の夕方、来るらしい。ということは、もしかしたら、私はなんだか、すごーく忙しいじゃないか。
家のなか、今日あたり足の踏み場なくなってんですけど。

ちびさん、5歳になった。
昨日は咳も出るので、医者に連れていったが、熱はなく、いたって元気。家じゅう、散らかしてまわる。散らかす散らかす散らかす。片付けない。片付けさせる気力も、かわりに片づけてやる体力も私にはない。あーあーあー、どーしようー。

ちびさん、5歳になった。
はじめて会ったとき、5歳だったグレースは、二十歳になった。今日、メールを送ってきて、「パヤタスから送っています、これが私のアドレスだから、レティさんに言うことあったら、ここに連絡して」って、メールしてきた。5歳だったのに、5歳だったのに、5歳だったのに。キラキラ星歌ったり、踊ったり、虹の絵かいたり、ごはん食べながら眠ったりしてたのに。
ちびさん最近、虹の絵かいたりするのが、どこかで見たことあると思ったら、そうだ、グレースがよくかいていたのだ。押入れのどこかに、あのころのグレースがかいた絵を、私はまだ持っている。
うーん、ちびさんの絵、片っ端から捨てているが(だって片付かないし)すこしはとっといてやろうか。

ちびさん、5歳になった。うれしい、うれしい、うれしい。