ああ。

ちびさん、パパに抱きついて泣いていた。
「ぼくは、みんなといっしょにうたうのはむずかしいし、おどるのもむずかしいの。リトミックも、むりなの」
むずかしいことはたくさんある。
「なわとび、できないの。すべりだいは、こわいよ。あー、はしるのは、すぐつかれるの」

パパがためいき。「つまり、ママそっくりっていうことか」
ええ。まあ。そのようですね。

はげまさなきゃ。
でも、できることもたくさんあるよ。
カスタネットとピアノはできる。絵もかける。粘土もできる。積木もできる。ひらがなもかたかなも書ける。数字も数えられる。漢字も読める。雨ニモマケズ、も言える。じゅげむも言える。祇園精舎も言える。だから、大丈夫だよ。なっ。」

うん、と泣きやんだが。祇園精舎とかなあ、いまのところ役に立ちそうもないが。

土日は、もちろん幼稚園は休みで、ちびさん家にいる。
1日じゅう、ママ ママ ママ ママ ママ ママ ママ ママ
まとわりついて遊びたがる。
「ママ」と呼ばれて、思わず、「うるさい」と返事して振り向いたら、泣き顔の子どもがいるのである。
ああ。
「だって、ぼく、ママのこと、すきなんだ」と泣くのだ。
ああ。