猪鹿蝶 森の神さま

「ぼく、ママがおこったってぜんぜんこわくない」などと言いだした。ちびめ。
それでもって、さっぱり言うこと聞かんのである。ごはんと呼んでもこん。リモコンにぎりしめて、ずーっとアニメ見ている。
それでもって「ぼくのクリスマスのプレゼントは」などと話し出す。
「おまえ、いい子にしてないもん、プレゼントがくるわけない」とパパに言われて、ようやくことの重大さに気づいたらしい。
「ぼく、いい子にします。ママの言うことききます。テレビは30分見たらおしまいにします。ごはんもぜんぶたべます」
泣きそうな顔になっている。が、それくらいでゆるしてもらえると思うなよ。

「だから、おまえのやってることはぜーんぶばれてるんだよ。りくの両方の肩には、目に見えないけど、ちっちゃいものクラブ(おじゃるまるのちっちゃいキャラクターさんたち)がのっていて、りくのやってることぜーんぶ、リスさんやシカさんやイノシシさんたちに報告してるの。ママの言うこときかないで、いじわるばっかりしてるから、ほら、外にイノシシ来て、待ってるんだけど、どうする、行くか?」
パパに手をひっぱられたちびさん、「行きません、行きません、いい子になります」と泣く。

「いい子になるというんならしょうがない。イノシシさんには帰ってもらうが、リスはどうする。パパのケータイはリスに直通(リスの絵がついてる)。おまえがテレビばっかり見てたら、リスがリモコンもっていくだろう。そうしたら、パパはニュースが見れない。ママは坂の上の雲が見れない。どうしてくれるんだ。」
ケータイに手を伸ばしたパパに抱きついて阻止するちびさん。「テレビは30分でおしまいにします。ごはんになったらリモコン切ります。だからリス呼ばないで」

涙をふいていっしょうけんめい、ごはんを食べるちびさん。いや、面白いわ。「だから、ぼく、クリスマスはおじいちゃんのところに行くんだよね」と確認している。そっ。うちにはサンタは来ないから、サンタのいるところに行くんです。「リスも来ないよね。ママもさかなのうえのくも、見れるから、だいじょうぶだよ」

魚の上の蜘蛛?

ああ。人間には宗教が必要だ、とパパが言う。畏怖するものがないと、野放図になって、つけあがってしまう。
たしかに。リスとかシカとかイノシシとか、毎度、森の神さまたちにはお世話になっているのだった。

ところで、このあたりの畑には、「猪鹿蝶なんでも来る」らしい。
といって、花札みたいにめでたいわけではなくて、
この時期、きれいな野菜がとれると高く売れるらしいのを、ぼろぼろにしていくらしいのだった。蝶もなかなかしぶとかったらしい。
道路沿いの大根を抜いていくのは、人間らしいが、盗むのはともかく、抜いた穴を埋めんのが困る、らしい。

ちびさんの空き地の畑、「まあ、絵本に出てくるような畑つくっとってじゃ」と町内会のおじいさんたちに言われているが、雪がくる前に何か収穫できるかな。とりあえず、はつかだいこんがはつかだいこんになるのを、ずーっと待っているんだが。

うーん、花札したい。
子どものころの正月なんて、酒のみながら花札三昧だったが、ちびさんをつきあわせるわけにいかんしな。