はしるはしる

更級日記に、物語というものに憧れた少女の著者が、物語が手に入ると知らされたときの、気持ち、早く読みたくて、はやる気持ちが「はしるはしる」と書かれていて、高校の教科書で、それを読んだときの、千年の向こうから、まっさらな風が、まっすぐに胸に吹きこんできたような気持ちを、いまも忘れない。どきどきしたのだ。

あのとき、私きっと、孝標娘に出会った。

 

さて。思い返せば、昔、受験生だったとき、私はとてもしんどかった。毎晩、ヤクザが借金取りにやってくる家で、女の子が大学に行くとか、親は想像もつかないから、大げんかの果てに勝手にせえ、となって、まあ、勝手にするんだけど。

国立一校しか受けられない、あとがないから、真夜中、ヤクザもこない、電話もならない、あたりの寝静まった時間に起き出して勉強してた、おかげで、孤立無援なんか、ほんと怖くない。たしかにしんどい受験生だったんだけど、

それでも、

受験生の親をやってるよりは、自分が、受験生である方が、よほどましだ、と思う。

しんどいわ。

模擬試験は長くE判しか見てない、それでも特攻しないと、気がすまないんだろうから、すればいいけど、戦費とか、戦後処理とか、考えると、吐きそう。

予約奨学生は認定されたので、それはよかった。

 

古文が出来ないという。でも、単語も文法もわかってる。勘だけでしのいだ私よりはよほどたしかそうだが、ひらがなの羅列が過酷らしく、風景が見えてこないらしいので、一緒に本読むことにした。本棚の奥の埃のなかから出してきた古典さんたち。

そんなわけで、先月は、更級日記全編を読んだ。なつかしかった。全編読み通したのは、私も初めてかもしれない。全編通してみて、はじめて気づいたこともある。私が歳とったから、わかるようになったこともある。

「古代の親」とかいう言葉あって、古くさい考えの親、という意味。宮仕えは大変だから、家にいて早く結婚したほうがいい、って古代の親が言うのよねー、私、源氏物語読んで、私も大人になったら源氏の姫君のようになるかしら、と思ってたのに、現実の結婚はなんにも面白くなかったわ。などとあり。

「夫さんのこと、何にも書いてない」と気づいた息子。そういえば。

ラノベ読むみたいに読むのが楽しいと思う。古文だから難しげにみえるだけで、難しい話は何にもないのだ。

夫さん、それでも亡くなったあとは、しきりに、先立たれて寂しい、と言ってもらってる。夫も死んで子どもたちも成人してしまって、なんなの、この人生、みたいなことを、昔の友だちに書いたら、いまは尼になってるその友だちから、あんたがそんなこと言ってたらこの私はどうなるのよ、みたいな返事が返ってくる。なんか、女同士のなぐさめあいかたが、昔も今も変わんない。

「田舎せかい」という言葉もあって、ウケた。息子、田舎せかいで暮らしたいそうです。

更級が終わったので、今月は宇治拾遺物語読んでる。楽しいのがいいかなと思って。で、息子と2篇ずつ、読んでるのが、面白すぎて、毎晩爆笑。

こないだ亡くなったけど、みなもと太郎さんのギャグ漫画で読みたいと思う、宇治拾遺物語。仏教説話みたいのから、パワハラ上司の自滅の話みたいのとか、町の小噺、なんでも放り込んであって、その日どんな話にあたるかは、読んでみるまで、わかんないのだ。

囲碁ばかりしている修行僧がいて、怠けものだと蔑まれているんだけど、黒石は煩悩で白石は菩提、煩悩を菩提に変える楽しみを説く、よろし^_^

宇治拾遺物語に救われております。

 

で、勉強してたはずの子が、いまはまた台所にお茶飲みにきてスマホ日本沈没のマンガ読んでる。机に向かうの30分が限界らしい。

1時間以上、静かなときって、必ず寝てる..

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