『短歌両吟 類人鳥』 について

『短歌両吟 類人鳥』

蝦名泰洋と野樹かずみの、短歌のコラボレーション。全360首。
1000円(送料込) 限定100部。

詳細こちら。
http://yumenononi.blog.eonet.jp/default/2013/05/6-06a5.html



買ってくださったみなさま、ありがとうございます。
おかげさまで製作費回収できて、わずかですが黒字になって、こういうささやかなことで、とてもほっとしている。
まだありますか、って心配そうに声をかけてもらったりするんですけど、まだあります。
慣例に従って多少の歌人に贈呈したら、在庫は一瞬でなくなるけれど、
部数も少ないので、贈呈はしない方向です。(でもすこしはしたけど。)

だれかがくださいって言うまで、待っている。
20年待ったもん。もう一生待っててもいいような気がする。
って歌は言ってる気がする。歌たち、段ボールの紙屑の底に20年いたのだ。
そんなにいそいで、いなくならなくていい。
(でも、読んであげようという方はなくなる前に声かけてください)



詩を書く友人が、これからじっくり読みますって、メールをくれて、
いやいや、恥ずかしいからそんなじっくり読まなくっていいよって、返事して、
でもそれから、じっくり読んだらどんな気持ちがするんだろうって、
ちょっと気になった。

それで、自分で自分の気恥ずかしさをねじふせて、やっと私はゆっくり読んだ。
ああ、これはとてもいい作品だよ、と腑に落ちた。
誰も気づいてくれないかもしれないし、理解されないかもしれないし、
評価されることもないと思うけど、
野樹は伝統的に隙だらけだし、侮られたりするかもしれないけど、
でも、やっぱりいい本だよ。
じっくり読んでもらって、いいです。

原稿紛失しないでよかったと思いました。
私がいたらないせいで、誤植あったり、
金がないせいで、じつに質素ななりですが、
本にできてよかった。

歌たち。
20年たっていたのに、文字だって消えかかっていたのに、
這い出してきたもんなあ。黴臭い段ボールの底から。
私はそれが不思議で仕方ない。
作者たちの記憶喪失にめげず、私のいいかげんな扱いにもめげず、
這い出してきた歌たちの心意気は、あっぱれなことだと思う。

「彼は負けない決意なんだよ。貧しさにも、周囲の無理解にも、友人の心ない仕打ちにも。世間の冷ややかな目にも、時代の激流にも。」

しばらく前に読んだ原田マハ「ジヴェルニーの食卓」という本。
画材屋のタンギー爺さんが、セザンヌについて語っているくだりを思い出した。

「類人鳥」の歌たちは、負けない決意でいたんだ、きっと。
羽の長いのも短いのも、飛べる鳥も飛べない鳥も、負けない決意でいたんだ。