温泉と動物園と雨の森

8月18日
数日前に渡ったばかりのしまなみ街道をまた渡る。松山、道後温泉にゆく。
松山というのは、よく通る。よく通るが、通るだけで、街なかを歩いた記憶は、ほとんどない。
道後温泉はたぶん、小学校の修学旅行以来じゃないかしら。
「ぼくは道後温泉に行ってみたい」と子どもが言うので、来た。
そうか、こんなところだったのか。
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いまどき、エアコンのない施設って珍しい。扇風機はよくまわっているし、私はそれでいいんだけど、猛暑の午後、暑がりのパパはすこぶる不満そうだった。すみやかにホテルに移動して昼寝する。

夜、私は高校のクラス会。同じ時代を生きているはずなんだけど、ひとりひとりには、全然違う時間が流れていたんだ、というあたりまえのことを、ふと理解しづらい気持ちになる。そういえば、時間の森、という雑誌が昔あったなあと、唐突に思う。あの雑誌のタイトルはよかった。
それらの、私からは見えない時間の束と、どう出会っていけばいいか、ふと途方にくれるが、まあそんなことはいいや。そこはかとない親しみの感情がたより。飲み放題なので、せっせと飲む。
すこしはためらっていたんだけれど、帽子まわさないの、と言ってもらったので、まわす。パアラランへの寄付、ありがとうございます。しあわせ。

2年のときに同じクラスだった男の子が、死んだという話を聞くが、名前も顔もなんにも思い出せない。
思い出せないので気にかかるけれど、思い出せないのでどうしようもない。



8月19日
砥部動物園に行く。
行くつもりだが、道に迷う。見覚えがあるなあと思っていたら、去年も迷った道だ。そいで東温市役所にたどりつく。去年はそこで道を聞いた。今年は日曜で休みだが、そこからなら道はわかる。

動物園なんか何が面白かろう、と思うんだけど、行くと面白い。Img_5568 
せっせと写真撮る。


子どもが撮ったペンギン。Img_5610 


冷房のかかった通路の向こう、ひっそりとオウサマペンギンがいた。子どもとオウサマペンギンとしばらく見つめ合っていたが、お互いに、微妙な時間差で、お辞儀したのが、おかしかった。
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ライオンでしょ、トラでしょ、
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このあたりで、子どもがカメラ落として壊しちゃった。

さて、ここの動物園のシロクマは、赤ちゃんのとき、親が育てないので、飼育係が家に連れ帰って育てたことで、ちょっと有名。ピースという名前。12歳になったらしい。テンカンがあるので、いつも見られるとは限らないらしいんだけれども、行くと、いた。
むかし、「ぼくはシロクマの子どもを飼ってるんだ」って嘘言った男の子のことを思い出す。

動物園を出て、車に乗りこんだところで、いきなりの大雨。
大雨のせいで、方角をまちがったらしい。気がつくと、深い森のなか。
しかも反対方向に向かって走っているけど、まあいいや。森のなか、しばらく走る。
車のなかに置いておいたカメラは、機嫌が悪くて、映ったり映らなかったりする。


森のなかの道の駅で、こんにゃく買う。子どもはかき氷食べる。吊り橋があって、吊り橋渡ろうかと思ったけど、また雨が来そうなのでやめて、まじめに帰路を探すことにする。
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雨の森のなかを走りながら、どうしてここを、出て行かなければならなかったんだろうなあと、考えてもせんないことを思う。この森のなかの、木々を流れる時間から、こぼれ落ちて、どんどんあやふやなものになって。


雨の森を抜けるころには晴れて、瀬戸内海は青い海。
ごはん食べて、橋を渡って帰る。Img_4849_3