まんじゅうこわい

1年生のころ、まんじゅうこわい、のお話に子どもが夢中になった。もう2年前だね。あれは、こわいものはまんじゅうだ、と言った男がいて、すると仲間が男をこわがらせようとまんじゅうを集めて、男は、こわいこわいと言いながら、大喜びでまんじゅう食べまくる話だったが、

子どもはまんじゅうきらいである。あんこが食べられない。
私はまんじゅうきらいじゃないが好きでもない。わざわざ買って食べたりはしない。
パパはまんじゅう好きである。でも糖尿病なので、いまは、まんじゅうこわいのだ。

ところで選挙。
「安倍まんじゅう、というのがあったなあ」とパパが思い出す。
以前、安倍晋三が首相だったころに、山口県のどこかの道の駅で売っていた。
「安倍を応援するんじゃない。饅頭屋を応援するんだ」ってパパは言っていたが、私たちの反対で買うのをあきらめたんじゃなかったか。
子ども、まんじゅう食べないし。

「あれ、まだ売っているかな」って言う。
さあ。

まんじゅう気になるのか。
買ってもいいよ。小麦粉とか砂糖とか入っていないまんじゅうなら買ってもいい。

ああ。血を流さないなら肉を切り取ってもいい、っていったのはベニスの商人だったなあ。

国防軍をつくる、というのは、徴兵制もありか。戦争も行くのか。人を殺すのか。だれを殺すのか。血は流すのか。だれの血を流すのか。

いやそれとも。戦争せず血を流さず、貧乏な家の少年に食べ物や教育を与えてくれるのなら、あってもよいのか。私の伯父や従兄弟たちが自衛隊に入隊して、食っていったように。

だが。
一生銃をもつことなく生きられる可能性があるのが、せめてこの国のとりえだと私は思っているんだが。

きみは軍隊に行ってはいけない。学校でいじめられる子が、軍隊でいじめられないはずがない。
それでもしも、昔みたいに徴兵制が敷かれて、兵隊に行かないのは非国民だと言われるような時代が来たら、そのときは非国民であることが正しいから、きみは迷わず非国民になって、兵役拒否しなさい。
路上や刑務所でみじめな死を死ぬことになってもそうしなさい。

いちばん大事なのは、人を殺さないこと、それから自殺しないことだよ。

と、子どもには言った。