ショウジョウバエ

ばてた、んだな。朝起きれず。体が鉛のようで動かず。家族にののしられながら、昼近くまで寝ていた。
なんとなーくうしろめたいので、家事などする。といっても、積み上げていた段ボールの類をつぶしたぐらいか。

台所の掃除もすこしする。それにしてもこのショウジョウバエはどこから。
と思っていたら、かたすみで、リンゴが忘れられて腐っているのを、パパが発見して、ぱにっく。ぱああにっく。
ああ、これはショウジョウバエの好きそうな、甘い匂いだわ。
……またひとしきりののしられる。

小学校の花壇のことを思い出した。全部のクラスにひとつずつ、けっこう広い花壇があった。花壇のはしっこでは白い山羊を飼っていた。反対側のはしっこではウサギも飼っていた。毎朝道端の草摘んでウサギにやっていた。
ゴミ捨て場もあって、掃除のときの草や葉っぱはそこに棄てていた。そのゴミ捨て場で、ショウジョウバエの実験をした。何年生のときかな。イチゴをずっと置いて腐らせたら、ショウジョウバエがやってくる、っていう、たぶんそれだけの話なんだが。

せっかくだから子どもに見せてやろうかと思ったけど、パパがあんまり怒っているので、そそくさと片づける。とっても楽しそうだったショウジョウバエも、なんだかあわてふためいている。

ここんとこ毎晩、子どもに読んでやってる、世界の名作絵本シリーズ。
今日は「秘密の花園」の最終回。
メアリーのおとうさんもおかあさんも召使いも、コレラで一晩で死んでしまいました、というところからはじまるお話なんだよね。子どもこわがって、次の夜から2晩連続読むのを拒否したが、こわくないこわくない、最後は絶対楽しいよ、でも途中でやめたらこわいまんまだよ、と言い聞かせて読み続けたわ、ほら、秘密の花園でみんなしあわせになったよ。

いいお話だよねえ。「秘密の花園」でメアリーはやさしい子になるし、コリンは健康になる。もしも私にも「秘密の花園」があったら、私も、こんなにぎくしゃくしなくて、まっすぐな自分になれるはずなのに、って、子どもの頃に思ったわ。

白いユリが花壇いっぱいに咲いていたのは4年生の夏。教室の花瓶に活けるぶんを摘んでおいでと、担任からハサミを渡された。さて摘み始めたが、どれくらい摘めばいいもんだろう。摘んでも摘んでも、花壇のユリの花は減らないし。教室の花瓶は、頭のなかでどんどん大きくなっていく。両手いっぱいに抱えて、教室に戻ったら、担任が、こんなにたくさん、どうするんだ、と言った。
机の上の花瓶は、嘘のように小さかった。
ほかのクラスの花瓶にも活けてまわったっけが。

ばいばい、楽しそうなショウジョウバエさん。