人生最高のデートのために

子どもが言うには、
「ぼくは、宇宙から乳母車にのって、黄色い道を走って地球にやってきたんだよ」
「ぼくは、本当はニューヨークがよかったけど、ちょっと道をまちがえたんだ」
それで、ここに生まれたらしい。
そりゃ残念だったね。
「でもいいんだ。友だちできたから。ママとパパのことだよ」

しばらくして、子どもが言うには、
「もし、ママがもっと若くて、ぼくがもうすこし大きかったら、ぼくはママとデートするのに」
もっと若くて、は余分。若くなくてもデートできるよ。
だけど、デートって、何するの。
「映画みたり、おしゃれなカフェでお茶飲んだりするんだ」
おしゃれなカフェ! いいね、ふたりでデートしようか。
「うんうん、デートしよう。ぼくはママが大好きだし」

ママも大好きだよ。じゃあ春休みになったらしよう。春休みになったら、たぶん何か、たのしい映画がやってくるよ。映画見てお茶しよう。
「映画館ってどこにあるの」
行ったことないね、そういえば。どこかにあるよ。それで映画館では、ポップコーン食べるんだ。
「ポップコーン!」
割り勘だよ。

子ども、ほっぺた真っ赤にしてうれしそうである。どうしたんだい。

でもさ、デートなら毎朝してるでしょ。公園の登校班のとこまで一緒に歩くでしょう。
「そんな短いのじゃだめだよ。映画見て、カフェでお茶飲んだら、人生最高のデートなんだ」

なるほどっ。
じゃあ、人生最高のデートのためにはさ、そこの玩具片付けて、布団敷いて寝ないと。
「うん、わかった。人生最高のデートのためにね」

子ども、いつになく、ものわかりよくお片付けした。

ふふんっ。デートの約束っと。もしかしたら、ただの子守りだが。