こころ

夜、子どもが泣いている。
パパに叱られたらしい。
きくと、何かへんなものをくちゃくちゃ食べていたそうだ。
これ、と渡されたのは、小さなビニールの袋。
そりゃ、叱られるわ。
これは食べるもんじゃない。
ウミガメさんは、これをクラゲとまちがって食べて、死にます。

子ども、怒りながら泣いている。
「だって、ぼくは」って言う。
「ぼくは、今日はほめてもらってないんだ」って言う。
???
それでどうしてビニール食べるの?
「ママがぼくをほめてくれないから、ぼくはストレスで、それで食べたんだ」って、どういう道筋でそうなるんでしょうか。
子ども、最近、叱られると逆ギレする。
パパはこわいので、ママに八つ当たりする。

それできみは、何を、ほめてもらいたかったんでしょうか。
ママは気づかなかったのかも知れないけど、ほめてもらえる、どんなことをしたでしょう。勉強がんばったとか? 何かお手伝いしたとか? お片付けを言われなくても出来たとか?

すると、子どもは胸を押さえて、しょんぼり言った。
「あ、なんだか心が小さくなるみたい」

だけど、きみは今日ほめてもらってる。ピアノのレッスンで、上手になってますって先生にほめてもらったし、学校の畑で育ててもって帰った枝豆をパパに食べてもらって、おいしいってほめてもらってる。

「あ」
聞いてないんでしょ。ほめてもらっても聞いてないじゃん。

子ども、私の腕にかみつく。バク。都合が悪くなると、かみつくのだ。

2回もほめてもらったら十分。足りなかったら、自分で自分をほめてあげなさい。でも心が小さくなるって気づいたのはえらいよ。

「小さくなって小さくなって、もうこんなに小さいんだ」って指でつくったわっかをどんどん小さくする。「もう見えないくらい」

明日、朝起きたら、大きな声でおはようって言ってごらん。それで、ぼくは早起きしてえらいなって、自分をほめる。それから、行ってきますって言って、またほめる。毎日学校に行ってえらいなって。そうやって心に息を吹き込んでやったら、大丈夫。

子ども、パジャマに着替えながら、疑わしいなあという目でこっち見ていた。

子どもの成長は、面白いなあ。
こころ、ときたもんだ。難題だよ、それは。

私は、輪ゴムとかを噛んでたかなあ。ガムみたいにくちゃくちゃ。