電話

今日連絡帳に書いたばかりなのに、今日、先生は、隣の席の男の子が、りくを叩くのを目撃したというから、たぶん、毎日叩かれていたんだろうなあ。

夕方、先生が電話をくれる。なぜ叩くのかときいたら、りくし君がいやなことを言ったから、というのだが(ああ、やっぱり)、何を言ったのかは、次の瞬間には、言ったほうも言われたほうもわからない。
相手の男の子に注意はしてくれたみたい。
ふたりとも絵をかくのが好きで、仲良く遊んでいるようにしか見えなかったし、りくし君は叩かれたというようなことは何も言わなかったのだ、という。

言わないのだ。親にも言わない。だいたい1ヶ月くらいたってからかな。相手の気持ちもわからないが、自分の気持ちもなかなか把握できないのかもしれない。もう限界、というころになってようやく言う。

相手を嫌いかというとそういうことでは全然なく、むしろ、りくの気持ちのなかでは「なかよし同盟」なので、叩かれるというのも、本当は言いたくなかったかもしれない。

でも今度叩かれたらとにかく言いなさい。叩くのがなおらなかったら、相手もかわいそう。それでもなおらなかったら席替してもらおう。

同じことを何度も言うのが気になります、と先生。ええ、何度もいいます。しつこい。受け止めてほしいところで受け止めてもらって、納得できるこたえがあると黙りますが、そこにいきつくのは難しい。いきつかないので、ずっと言い続ける。私たちは慣れてなんとも思わなくなっているけど、アスペルガーの特徴のひとつにあるみたい。
ということは、注意したぐらいじゃなおらんね。私も同じ癖がある。

だからつまり、りく、おまえは喋るな、ということになるんだが、それもまあ、無理な話だ。

でも、叩かれても、おまえは叩くな。絶対暴力をふるうな。非暴力を通したら、20年後には、それがおまえの武器になる。昔、インドのガンジーという人は、たったひとりで、非暴力を通して、イギリスに勝ったんだ。

という話を、夕飯時にパパがするのを聞いていたりくが、「それは、かしこい武器なんだよね」と言う。おお、すこしはわかっているのか。

電話のついでに、鉛筆の文字がうすいのも気になりますと言われる。こんなもんと思っていたが、うすいといわれれば、うすいかも。指定どおり、2Bの鉛筆なんだけど、筆圧が弱いんだろうなあ。3Bとか4Bとか探しにゆくか。
歩くことはずいぶんしっかりしてきたと思うけど、排便がなかなか難しかったりしたし、筋肉が弱いところが、ところどころあるみたい。