でんぐりがえり

 するんである。誰もそんなこと教えないのに、ずっと練習していて、夕べ寝る前のふとんの上で、はじめて成功した。ふとんの上で大の字になったまま、真っ赤なほっぺたときらきらおめめで、満足そうで、ああそういえば、はじめて寝返りができたときも、こんな表情をしていた。
 それから興奮して、何度も何度もでんぐりがえりをする。頭をどこかにぶつけたのか、首をねじったのか、「いたい」という。それならやめればいいのに、まだしたがる。血管がどうにかなったら命にかかわるんじゃないだろうか。もういいかげんにしてください。ふとんのなかにひきずりこんだが、ごそごそ抜け出して、寝そべったまま、図書館で借りてきたうさこちゃんの本を読みはじめる。お話の最後がねんねの場面で、2度目にねんねの場面にきたとき、ようやく寝る気になったらしく、電気を消した。
 眠った子どもの鼻のあたりを何度もさわった。息しているだろうか。鼻血なんか出していないだろうか。
 でんぐりがえりなんかまだできなくていいよ。