がらがらどん

療育センター。今日は男の子3人だけ。
いつもは広い部屋に母子一緒で遊ぶのだが、そろそろ母子分離をしましょうということで、すこしの間だけど、隣の部屋に親たちだけ移動する。その部屋からは、隣の部屋の様子がよく見える(子どもたちの部屋からは見えない)。それで親のいないところで、子どもがひとりで、ほかの子どもや保育士さんたちと、どんなふうにやりとりしていけるか、ということなんだけど。

ダイキくん、お母さんがいなくなったとたんに泣き出し、ぬりえの間じゅう、ずーっと泣いていて、でも、泣きながらまわりの様子を見ているのがおもしろかった。
コウキくん、素直に楽しそうに保育士さんの指示にしたがって遊んだ。
うちのちびさん、すねて壁にはりついている。保育士さんが前の遊びの片付けをはじめると、いきなり仕事を思い出したように、片付けを手伝う。そのあと、黙々とぬりえ(がらがどんのお話のヤギのぬりえ)をする。

そのあと、リズム(音楽にあわせて、とんだりはねたり寝転んだりする)になると、ちびさん、走って壁のカーテンに貼りついてすわって、もう動かない。
このころ泣きやんだダイキくんは、保育士さんと一緒にとんだりはねたりしている。コウキくんは、ほんとうはとんだりはねたりしたいのだが、うちのちびが気になるらしく、となりにやってきて、一緒にカーテンに貼りついてすわる。ときどきリズムにもどっては、また、うちのちびの様子を見に来る。肩を叩いたりして誘う。
ちびさん、窓の外を見たりしている。コウキくん、何度も呼びにくる。

まあね。これが本性だろうと思うわ。いつもはママがいるから、ママにはりついて、勝手なことしながらも、輪のなかにいるけれどもさ。
コウキくんが、なんだかとってもお兄さんに見えた。うちのより、ちょうど1歳年下なんだけど、逆に思える。夏までは、ハヤト君が呼びにきてくれる係りだったなあ。

これはこれで、それぞれに個性的、楽しい社会をかたちづくっているわ、と思う、見ていて楽しかった。みんなが、期待されるいい子になるなんてできない。助け合って生きるよりしょうがない。
ハヤトくんといい、コウキくんといい、うちのちびさんを気にかけてくれる子がいるというのが、世の中よくできていると思う。コウキくん、そういえば、動物園に行ったとき、うちのがずんずん勝手なほうに行くのを、あとをついていきながら、ときどき戻ってきて親たちを呼んだ。面倒かけるなあ、まったく。

で、子どもたちの部屋に戻ると、ちびさん言ったのだ。
「ママ、ぬりえしたの」
じょうずにできたね。
「ママ、でも、リズムはしなかったの」
このあたり正直。
「こんどはする?」
「………」
沈黙のち逃走。