日曜日は……

たまったダンボールを潰そうと思い、重ねてあったのをばらしたら、ちびさん、それを並べて電車ごっこをはじめる。
「つぎは、どうぶつえんまえでーす。ちょっとまってください。おしっこしまーす」
などというので、おしっこだと思い、トイレの電気をつけてやったのに、ちびさん、ダンボール電車からおりて、おしっこするふりだけして、
「おしっこかんりょう。しゅっぱつしんこう。」
なに、それ。
それから、「かいがんまえ」とか、いろんな駅に止まるんだが、どの駅でも、「ちょっとまってくださーい。おしっこしまーす」と降りておしっこして、「おしっこかんりょう。しゅっぱつしんこう」。
めちゃめちゃ、おもしろかった。
誰がおしっこしてたの? ときいたら、「ライオンさん」と言う。なんの絵本だろう。

どこにも出かけない雨の日曜日。ちびさん、ひとりでずっと、ごっこ遊びしていて、幼稚園の朝の光景とか、先生たちのセリフのひとつひとつまで、よく覚えてるもんだ。テープに録音したのを再生してるみたいだった。
晩ご飯のときは、電話ごっこで、「もしもし、おでんわかわりました。(というお気に入りのセリフ)……ええ、……はい、そうですか。ママにかわります」って、見えない受話器を渡されたけど、誰からの電話よ、これ。
するとパパが受話器をとって、「あ、せんせいですか。どうも。……ええ、ええ、……りくちゃん、まじめじゃないんですか。いうこときかなくて……おかたづけしないし……ええ、わかりました。つよくいいきかせますから」
などと、真剣な顔していうもんだから、ちびさん、ほんとに泣きそうな顔になってたわ。
それからまた受話器をもったちびさん。「もしもし、おでんわかわりました。せんせいですか。……ええ、ええ、……どうも、もうしわけありません」
って、見えない受話器をもって、見えない相手に頭さげてんの。なんなの。その、もうしわけありませんっていうのは。

ああ、昔、母が受話器もって、「もうしわけありません」って、相手には見えないのに、「もうしわけありません」って、ぺこぺこ頭下げていた。あれは、借金取りの電話だったが。
あの日々以来、私は電話が好きじゃない。

日曜日に市場に出かけ……という「一週間」の歌。一日にひとつのことしかしないのよね。買い物だけ、とか、お洗濯だけ、とか。
一日のうちには、もっともっとたくさんのことするのに、へんな歌、と子どものころは思っていたが、一日にたくさんのことができると思えたのは、若かったからだな。一日にひとつでも何かやれば、りっぱなもんだ、と最近は思うようになった。

で、日曜日は、ダンボール潰しをした。いつのまにこんなにたまったのか、大きいダンボールに小さいダンボールを入れて、重ねて重ねて、積みあげて、10数個あった。くたびれた。