けど戦記

ちびさん、あれほしい、これほしい、と言いだしたらきかなくなってきた。
「お金がないの。わかった?」と言っても「わかった。けど…」とわかってないので、財布を与えて、自分で買い物させることにした。

買い物の度にコアラのマーチを欲しがったので、130円(実際は120円で買えた)集まったら買えるよ、それまでは買えない、と言って、お手伝いすると10円、というふうに渡してみたのが、今月はじめ。
10円、20円、30円、とたまっていくのを楽しみにして、スーパーでもお菓子を欲しがらなくなった。

(ときどき、おじいちゃんおばあちゃんからお菓子の差し入れが届くから、買わなくても、不自由はしないはず)

ある日、おじいちゃんがやってきて、ちびさんの財布の話を聞くと、「そっかそっか、小銭がいるのか」と自分の財布の小銭を全部ちびさんに渡すんだな。100円玉とか50円玉とかじゃらじゃらある(あとで数えたら1000円超えていた)。おじいちゃんが帰ったあと、パパは「まったく。人の努力をなぎたおしていって」などと言いながら、10円玉だけ残して没収した。
ちびさん、10円玉と100円玉の交換機能についてはまだ学習していないので、文句も言わず、10円玉が増えたので喜んでいた。
このとき80円くらいになったのだ。

そのころはまだ、財布がどっかにいっても気づかないくらい、だったのが、100円になると、もうゴールは間近、と思ったらしく、パパ10円ちょうだい、ママあと20円なの、とうるさくなってきた。
財布に10円玉ないから、あげられない、と言っても、
「わかった。けど…、ぼく10えん、いるの」
(わかってないじゃないか)
「でも、ほら、ないでしょ」と財布を見せても、
「わかったけど…、ぼく10えん、いるの」
(ひとの話きいてないな)
「あげたいけど、ないもの。あげられないよ」
「けど…あと10えん、いるのに」

「けど…けど…」と、実にしつこかった。
(りくの「けど戦記」とうちでは言っている)

数日後、ママの財布に10円玉がころがりこんできたのを見逃さず、しっかり手に入れて、お買いものに行って、レジに並んで、財布から一枚ずつ10円玉出して並べて(後ろに並んでいた人、ごめんなさい)コアラのマーチ、買いました。

1か月の攻防だった。