まわる。まわる。くるくるまわる。
くるくるまわるのがとまんない。
道を歩くのもくるくるまわりながら歩くから、ころぶ。
ちびさんの足、傷だらけ。

もっと小さい頃にくるくるまわっていたのは、無意識の感じだったけど、今はきわめて意識的。あれは、感覚の限界をためしているんだな。もう酔っ払い状態。くるくるくるくる。

ああ、これは私だ。

止めたって無駄なので、せめて安全なところで、納得するまでまわらせとくしかない。くるくるくるくる。


幼稚園バスを待つ間、一緒にバスを待つYくんと、ちびさんと私の三人で、しりとりするのが、最近の日課。Yくんは、同い年のちびさんでなく、私と遊んでいるのだが、まあいいや。ちびさんも、私がいると、Yくんとしりとりぐらいはできるのである。(たぶん、以前においかけっこして背中押されて転んでから、ちびさんはYくんを警戒している。)

道ゆく人が声かけてゆく。「おはようございます」と私も返事する。そのまま行ってくれればいいものを、
(そうすれば、私だって、おはよって言われたら、おはようって返事しようよ、と、たまには子どもに言う)
そのおばあさん、私の返事じゃ気に入らないらしく、近寄ってきて、子どもたちに、「ぼく、おはようは」と迫ってくる。
ごく社交的なYくんもとまどっているが、ちびさん、こわがって私にしがみつく。
そこにバスがきたので、おばあさんも行ってしまったが。

ああ、教育してくれているつもりなんだろうなあ。

道を歩くのって、どこからだれがあらわれるかわかんなくて、けっこうこわいんだよ。街なかなら、知らない人ばかりで、みんな無視してくれるからかえっていいんだが、近所は、だれが声かけてきたり、近寄ってこないともかぎらなくて、こわいんだ。それを一生懸命こらえているのに、挨拶まで要求しないでほしいのよね。

ということを、いちいち説明するわけにもいかんしなあ。

引っ込み思案、とか、人見しり、とかの適当な理解でもいいから、見逃してほしいのよね。おばあさん!


ふいに思い出した。小学校1年のころだ。クラスにまりちゃんという女の子がいて、彼女がなぜか、私の髪をさわる。私はそれがとっても嫌だった。たまに、だったかもしれないが、いつも、だったように感覚は記憶している。まりちゃんのことは嫌いでもなんでもなかったが、髪をなでられるのはものすごく嫌だった。学校に行くのがこわくなるほど嫌だった。その「嫌」を説明しようがないし、いや、やめて、と言っても通じなかったのかもしれないが、あれは、自閉症の感覚過敏の問題だったんだなあ。

冬にタイツをはかされるのが嫌だったのも、体にぴったりした服とか、タートルネックが嫌だったのも、わがままでもなんでもなくて、ほんとに単純に感覚過敏の問題だったのだ。いまも駄目だ。

ちびさんの行動の不思議も、それなりに理由があると思うんだけど、気づいてやれてないこともたくさんあるだろなあ。