ぼく、スカートをはきたい

という。
「ママ、ぼく、ふゆになったら、スカートをはきたいなあ」
え? なぜ? なぜスカート? なぜ冬?
「だって、ズボンはさむいから」
いやいや、スカートのほうがずっとさむいよ。
あ、でもズボンの上にスカートをはけばあたたかいか。
でも、なぜスカート。この家に、スカートをはくひとはいないのに。
いないから、なのか。
きみは男の子? 女の子?
「しらない」
知らないはずはない、が、すこし拗ねている。

スカートねえ。リルケは5歳まで女の子の格好で育てられたというが、きみも5歳だけど、スカートが似合うような顔を、もうしていないよ。
それに、きみがはけるスカートなんてこの家にはない。

それより、ぼくは本当は女の子だと言い出したらどうしよう。発達障害だけでも、じゅうぶん大変だと思うが、性同一性障害までくわわったら、そりゃまた、とことん世の中とそりがあわない人生だなあ。

スカート。でもスコットランドは男性の民族衣装がスカートだし、インドとか中東のイスラム社会は、ズボンの上にジャンパースカート着ているような衣装だし、昔知っていたスリランカの留学生は、家では巻きスカートのようなものを着ていたし、男の子のきみがスカートはいたって、世界水準で考えれば、別にへんなことでもなんでもない。

おちつけおちつけ。

なにいろが好き?
「あか、とピンク」
ちびさん、ピンクのキティちゃんのパジャマが好きだが、それぐらいにしておいてほしいんだが。

うーん、赤いスカート。
つくるか。
適当な布きれあったかな。
輪っかをつくってゴムを入れれば、スカートになるかな。

この時期だから、毛糸でもいいか。

それ着て、外出するとか言いだしたら、どうしよう。

5歳の男の子に似合うスカート。

うーん。