じゃんけん

ちびさん、1年前にはできなかったじゃんけんが、できるようになっている。
それで、じゃんけんするんだが、帰り道の坂道で、遠回りしたいちびさんと、したくない私と、じゃんけんして、2週間ほど、私、勝ちつづけた。だって彼は、最初はグー、のあとは必ずパーを出すし、私、遠回りしたくないし。

負け続けたちびさん、怒りだした。怒って怒って、「ぼくがパーだすから、ママはグーだしてよ!」と、八百長までもちかけてきた。
やーだよ。

それでも泣くほど怒るので、教えてやりました。きみは最初に必ずパーを出すから負けるんだよ。違うの出してごらんよ。

でも最初にパーを出す癖はすぐにはなおらず、しょうがないのでじゃんけんの練習、幼稚園バスの乗り場までの行き帰り、毎日じゃんけんして歩いています。グリコ、パイナップル、チョコレートなんて何十年ぶりですかね。だいぶ、いろんなものが出せるようになってきた。

それでも帰りの坂道のところ、やっぱりパーを出すので、しょうがない、最初はグー、その次はパー、までは揃えてやってあいこに持ち込んでやると、ちびさんずいぶん勝てるようになった。しかし、遠回り、私はしたくないんだが。



『わたしたちの路地』
河津さんが書いてくれた2行が、私はめちゃめちゃ好きだ。

  しかし遥かな過去一匹の蛍として地球を見おろしながら私は
  一切の苦悩とひかひか青白くじゃんけんをして勝ちつづけた

あーそうか。生まれてくるというのはきっとそういうことかもしれない。ということは、生まれたあともきっとそうできるのだ。
一切の苦悩と、というからには、一切の苦悩と。



今日のじゃんけん、どっちが勝つのかな。遠回り、やだな。坂道のぼったり降りたりなのに。
勝つべし。勝つべし。

そろそろ迎えにゆく時間。