みそしるの和音

いつのまに。

このひとは弾けるようになっていたのだろう。
バッハの「メヌエット ト長調」。

熱は下がったので音楽教室に行く。はじまるまですこし時間があったので、エレクトーンで、新しいテキストに出てきた和音とか、ひとりで楽しげに弾いていた。ちびさん「みそしるの和音もあるんだ」と言うが(ふうん、そんなのもあるんだ、と私は信じていたんだが)、テキストにミソシの和音はないそうである。

それからメヌエット弾きはじめた。
前半が弾けるようになったのは知っていた。後半をときどき練習しているのも知っていた。でもそんなにしっかり弾けるようになっているとは思わなかった。左手が何カ所が抜けるだけで、丁寧でもなく早さも伸縮するが、最後まで弾くではないか。リフレインを決して省略しないのはこだわりである。

まったく驚いてしまう。
だが。

歌は歌わない。
今朝は「おなかがすいた、コケコッコー、コケコッコー」と大きな声で鳴いて、まだねむたい親たちを起こして、
「はっぱに、はっぱに、なめくじ、なめくじ、もりのあさ♪」と、得体のしれない歌を、ハードロック風に歌っていたのに、
さあ、歌いましょう、となると「ぼくはうたえないの」とかたくなに黙ってしまうのが、まったく謎である。おともだちが歌うとき、ひとりで百面相していた。おともだちが踊るときは、床にたおれていた。

きみの言動は、みそしるの和音ぐらい謎だ。