診察

まだすこし微熱があるので、幼稚園休ませる。ついでに私は父母会をさぼり。午後、療育センターに、半年ぶりの診察に行く。

だいたい次のようなことだった。

「とっても成長しています。受け答えも表現も、豊かになってきました。幼稚園での生活が落ち着いているのは去年の経験が生きているのでしょう。能力的には、多くの部分で平均よりも上ですよ。社会性も法事に出て問題なければ、まず大丈夫です」

ということで、まず安心する。

ところで、ものごとの認識や理解は、ちびさんは基本的に視覚優位なのだが、人間の顔を認識するというのは、視覚ではなくて、社会性の領域らしい。アスペルガーの弱い部分。だから、自分であれ母であれ、実際の人間の顔がかけるようになったのはすごいのだ。しかも線だけでなく面でかけている。

「人間は表情もかわるし、髪型や洋服も変わるので、認識は難しいのです。だから、今日一緒に遊んだのが誰かきかれてわからないのは、無理もないことです。親や、毎日、家に帰ってからも一緒に遊ぶ友だち、というような関係ならまた別ですが。
また、幼稚園でなら、相手がだれかわかっても、場所がかわって違うところで会うと、だれかわからなくて挨拶できないということもあります」

「着替えなどの動作の遅いのは、知識の吸収や他の部分でエネルギーをつかっているのでしかたない、すこしずつ訓練していけばいいでしょう。アスペルガーの特質を理解して、無駄に叱ったり叱られたりしないですむ工夫をしていきましょう」

ということで、来月、知能検査、それから就学相談。

療育センターのあと、耳鼻科に行く。そのあと、うどん屋へ行ったら、子連れのお母さんに声をかけられた。どうやら同じ幼稚園の保護者らしい。なんとなく見た記憶がある。去年同じクラスだったかしら、ちがうしら。見た記憶はあるが、この人、だれだ。
覚えていないことがばれないように、離れた席にすわって、聞くだけ無駄と思いながら、ちびさんに、さっきのおともだちはだれ、ときいてみた。「わかんない」。

最近、こういうことが、ときどきある。こないだは何かの集まりのときに、子どもの姿を見失っていたら、「りくしくんはあっちだよ」と知らない女の子が教えてくれた。同じクラスの女の子だと思うんだけど、あの子だれってきいても、ちびさん、わかんないし。

人の顔と名前がなかなか覚えられないのは、私もちびさんと同じ。それはずっと、人間としての欠落というか、心の冷たさとか、他者への無関心とか、そういったことにつながる欠落のように認識されていて、ひそかに苦しかったのだが、ごくふつうに、アスペルガーの特性とわかると、それだけでも、ずいぶん気が楽だ。

人間は動くし、変容する。髪型も変わるし服装も変わる。場所が変わると、行動も違ったりする。人間を認識するのは難しいのだ。
むずかしいんだってば。