雨の王冠/知能テスト

雨の一日。梅雨に入ったのだろうなあ。
朝、家を出るとき、とりわけ激しく降っていて、
「今日の天気は雨」と言った子が、
「今日の天気は雨、じゃなくて、雨つぶ」と言いなおしていた。
アスファルトに打ちつけられてできる水の冠に、えらく興奮して、幼稚園バスが来るまで、無数の雨の冠を見つめていた。
ウォータークラウンというのだと教えてやりました。
だよね?

午後、療育センターに行くので、幼稚園に迎えに行くと、
クラスの男の子らしい子が「あっ、りくしくんのおかあさんだ」とやってくる。また別の女の子も「りくしくんのママだ、りくしくん、よんでくる」と言う。
私、名札もつけていないんだが、幼稚園もあんまり来てないのに、どうしてばれてしまっているのだろう。いつもおんなじ格好だからかな。すこしたじろぐ。
ごめんなさい。私のほうは、子どもたちの名前も顔も、おかあさんたちの名前も顔も、また全然おぼえていません。

療育センターは、知能テストを受けに。
どんなテストだろうと楽しみにやってきたんだけど、子どもと先生だけお部屋に入って、親たちは廊下にすわって待つこと一時間半。
長かった。
声も聞こえないし、なかの様子もわかんないし。
一時間を過ぎたころ、いきなり、元気なちびさんの声が聞こえてきた。
「あばしりいきは6りょうへんせいなんだ」
網走行き?
稚内行きは8両編成で、函館と札幌の間は連結して走るんだよ」
と、電車の話を始めている。
それがなんだか延々つづく。
それからまた静かになって、しばらくして、部屋の戸が開いた。

一時間半、先生と机に向かい合って、大人しくすわってテストを受けたそうです。質問の意味がわからないということはあったけど、わかれば答えられる。指示はだいたい受け止められる。わからないことはわからないと言える。能力のばらつきがわりとはっきり出てきているということでしたが、詳しい結果はまた今度。

網走行きは、絵をかいてそれを説明していたのらしい。雪が降るなかを電車が走っている絵を、まあ丁寧にかいていた。
ほんとにたくさんの雪。
たぶん、朝の雨つぶが雪に変わったんだな。

何はともあれ、ちびさん、一時間半も椅子にすわって机に向かっていたのはえらいよ。
パパも一緒だったんだが、隣の部屋が空いていて、しかも相談室でソファーもあったので、途中でパパはソファーで寝ていたし、私は一応廊下の椅子にすわって本読んで待っていたが、椅子の上でただれ落ちてゆきそうだった。

それから、耳鼻科に行って薬をもらって帰る。

くたびれた。