月を追う途中の子どもにあいさつを

  月を追う途中の子どもにあいさつをさよならみたいな青いハローを

蝦名泰洋さんの歌集『ニューヨークの唇』、完成しました。
Amazonでも発送はじまっています。クラファン協力いただいたみなさまへの発送も終えて、プロジェクトの完了報告もいたしました。

ほんとうに、ほんとうにありがとうございます。
信じられないくらい、美しい本になりました。きっと長く読み継がれる歌集だと思います。
『ニューヨークの唇』蝦名泰洋|その他の歌集|短歌|書籍|書肆侃侃房 (kankanbou.com)

装丁の美しさに、指が震えるんですけれども。
表紙の絵は、田代勉さんの日本画で「蒼い木馬」というタイトル。
歌集のなかにも木馬の歌が何首かあると思います。一番最後の木馬はコロナ禍の。生涯の終わりに近く。

  休館こそ脈打つ好機かもしれぬ木馬が息を吹き返すための

 

たいていのことは、あとがきに書いたので。第一部「ニューヨークの唇」は亡くなる前に蝦名さんが自分で纏めた180首。第三部「イーハトーブ喪失」300首は1993年刊行の生前唯一の歌集の再録。

第二部「カムパネルラ」36首は、野樹の選歌、構成。もしかしたら幽霊の蝦名さんに駄目出しされるかもしれないけど、私のわがままで並べました。責めは私に。

両吟集『クアドラプル プレイ』(2021 書肆侃侃房)に収録の歌以外から、蝦名さんの死後に、ふしぎに耳にもどってきた歌たちを。こんなふうに歌つくってたなとか、謎だけど好きとか。慕わしい歌たちを。
だいたい2013年以降の歌を順番に置いていって、クアドラプル後の歌が多いと思うけれども、一番最後の、象の眼の歌は、1992年頃の、最初の頃の両吟の。
蝦名さんが生涯の最後に、亡くなる1か月前に書いた短い詩が、象の眼の星雲のことだったんです。

  象の眼はどこか遠くの星雲に似ているさきに告げるさよなら

 

野樹が歌人であるならば、野樹を歌人にしたのは蝦名さんです。たぶんそれは、この本をつくるためだったのかもしれないと思います。出会いも別れも、「短歌さん」が仕組んだ罠だったような気がします。

たくさんの方に応援いただきました。ありがとうございます。