仲直りの仕方

 叱られると、両手を顔でおおってうつぶせる。まるで地震から身を守るみたいに。とりあえずこれが、彼の反省のポーズらしい。叱りすぎたかなあと思うことも多いんだが、そのあとは「ごめんなさい、なかなおり、あくしゅ」でひとまず話は終る。
 でも、「なかなおり、あくしゃ」だけでは終らない気持ちもあるらしく、叱られたあとに「かわいいりくちゃんだなあ」と言ってやってくるときは、抱っこしてほしいのだ。もっと小さいころ、私が「かわいいりくちゃんだなあ」と言って抱っこしていたので、そう言うと、抱っこしてもらえると思っているらしい。このときは、何もかも投げ出して期待にこたえることにしている。どこかで、仲直りの儀式を忠実に守るということがないと、安心して叱れないような気がするのだ。最近では「すりすりほっぺ」というのもある。これは何かの本で、子どもが自分で仕入れてきた。両方のほっぺたをすりすりとこすりあわせるのだが。
 子どももそれなりに親のご機嫌伺いは大変で、いきなり抱きつけないときは、ぬいぐるみの胴長の猫を持ってきて、「ねこちゃん、すきー」と私に押し付けてくる。私が「ねこちゃん、すきー」と猫をだきしめると、そのあとに自分の体を「りくちゃん、すきー」と押し付けてくるんであった。子どももご苦労さんである。最近、力がついてきたので、なんだかしじゅう、押し倒されている。