ぐるぐる走る

 幼稚園の未就園児のクラスに行く。うちわに紙と鈴を貼りつけて、たぬきのでんでん太鼓をつくり、鳴らして遊んだ。工作はわりと集中してできたし、楽しそうだった。絵本を読んでもらうときも、おとなしくすわっていた。(私のひざの上で。他の子はみんな、ひとりで床にすわっていた)。
 おやつに、ぶどうとコブがでたけど、見ただけで「たべない、いらない」と言う。ということは食べないのだ。先生が心配してくれるが、偏食がひどいんです、としか言いようがない。何がなぜ食べられないのか、理由はわからないし、でもとにかく、彼が「たべない」と言ったら、どうしたって食べさせられないのだ。
 しょうがないので、ちびさんのおやつ、私が食べた。
 
 おやつの間、ちびさん走っていた。教室のまわりをぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる、まわっていた。けっこうすごい勢いで、ぐるぐるぐるぐる走っていた。
 工作の間は椅子にすわっていられた。でも、何もしないときに、椅子にすわって待つということができない。それにしてもなんだってあんなにぐるぐるぐる走るかなあと、思いながら、家に帰ってきて、いきなり思い出した。私も部屋のなかをまわっていた。
 
 ちびさんみたいに走っていたかはわかんないけど、部屋のなかをぐるぐるぐるぐるまわっていた。早足ぐらいでぐるぐるぐるぐる。小学生になっていました。学校から帰って、誰もいない部屋のなかをぐるぐるぐるぐる。数を数えながら、100まで数えたら反対まわり、とか、していた。なんでだったのかなあ。ついに目がまわってたおれるときの、気持ち悪さまで思い出したけど、その気持ち悪さで、気持ちが落ち着いたような記憶がある。