「文芸思潮」

「文芸思潮」23号(アジア文化社)という本が届いていた。
小説の同人誌(なのかな)。350ページもある。
購読しているわけではなくて、はじめて見る本なんだけど、特集が「追悼 河林満」で、私も追悼文を書いたので、送ってくれたのでしょう。
東京にいたころ、ずいぶんお世話になったので。今年1月19日逝去。57歳。

河林さんが新人賞をとった「渇水」という小説の、本の装丁は司修で、私は表紙に魅かれて、たまさかその本を買っていたんだけれど、まさかその後、東京で、その作者と知り合いになるとは思わなかった。
もの書き、としてより、児童館の仕事を紹介してくれた人、としてつきあっていた感じなのが不思議なんだけど、私が人間不信のさなかにいるとき、人間関係のトラブルにまいっているときに、児童館の仕事を紹介してもらったのは本当にありがたかった。

子どものころ、私は同級生と遊ぶのが難しかった。極端に運動音痴であったし、社会性は欠落していたし。それが、昔できなくて、だからできないと思いこんでいたいろんな遊び、卓球でもバドミントンでも、やってみるとできたのが驚きだった。遊び方が、わかる。ひとりひとりの子どもとの付き合い方が、わかる。
子ども時代からの欠落を、児童館でバイトした数年間で、埋めさせてもらった感じがする。それはそのまま、生きることへのひどい怯えを、克服していく過程でもあった気がする。

そういうことを、河林さんに、お礼も言えないままになってしまったのが、とても残念だ。

 逝きてあの日の少年に戻りふるさとの海からの光 見るだろうか (野樹かずみ)