世界はきみの思うままだよ

「ぼく、これかいて、はったの」
と、ちびさんがビデオテープを見せる。
ラベルに「やまぐちごう」と書いて貼っている。
「よくできたね」
と言ったあと、山口号の番組とかあったかな、録画したかな、とちょっと思う。
でも、私はテレビ番組の録画とか、難しくてできないので(これを言うと、あきれられるが、ほんとにできない。どのボタンをどの順番で押せばいいかが、どうしてもわからない、ので、さわらない。)パパと子どもが何か録画したのだろうと、思っていた。

「やまぐちごう、見るの」とちびさんが言う。
ビデオの再生も私には難しいので(これも、どのボタンをどの順番で押すかが覚えられなくて、2回に1回は失敗する。音だけ出て画面が出ないとか、いろいろ。ちびさんが自分でやるときもある。2回に1回は成功するみたい。でもまあ、そんなふうなので)パパがいるときはパパにしてもらうんだが、で、パパにしてもらったんだが、「やまぐちごう?」と首をかしげている。

さてビデオがまわりはじめたが、ちびさん、これは、山口号ではなくて、「ゲド戦記」のようだよ。
ちびさん、ショックを受けている。
「やまぐちごうは?」
って、もともとこれは、山口号じゃないよ。これは「ゲド戦記」。
「けど、ぼく、やまぐちごうがいいのに」
だって録画してないのに、再生できないよ。
「けど、ぼく、やまぐちごうって、かいたのに」
書いてもだめ。はいってないんだから。わかった?
「わかったけど……」

笑ってしまう。そっかそっか。書いたら、書いたとおりの中身になると思ったのか。

で、傷心のちびさん、ラベルに書いた「やまぐちごう」のあとに「はいってない」と書き足す。
その横に「ゲド戦記」と私が書いたら、
「けど、ぼく、ポニョがいいのに」

だからっ………!!!