ゆーかい犯

山口のおじいちゃんから、子どもに手紙が届いている。
8月の終わりのピアノのコンクールのときから、1か月以上も会ってないから、さびしいって。9月に会いに行こうと思ったら、そのときはみんなで宇和島に行くというので会えなかったし、10月には山口に来るというから楽しみにしていたが、おじいちゃんは仕事で沖縄に行くから会えない。でもおばあちゃんが喜ぶから来てください。とかとかいう、長い手紙。

それからさらに、電話がかかってきて、手紙を書いたのに、電話が来ん、とさびしがる。ちょうど私も子どももいないときにかかってきて、手紙書かせるから、ってパパは言ったらしいが。

おじいちゃん、そんなにこの子に会いたいのかな、と話していると、
「子どもは無事だぞ」ってパパが言う。「会わせてほしかったら、金を出せ」
ゆーかい犯みたい。いや、実際そうだわ。
子ども人質にとってたてこもって、ほら、米よこせ、とか、カップヌードルもってこいとか、ヤクルトがなくなったとか、去年の服はもう着れない、とか言ってんの。
そいで、おじいちゃんとおばあちゃん、せっせと、子どもの食べるもの飲むもの、着るもの、玩具だのDVDだの、届けてくれるわけだ。それを食べたり飲んだりしている私たち。

あの、さ。レ・ミゼラブルで、コゼットを預かった宿屋の夫婦が、コゼットのお母さんに、コゼットの服がいるとか、病気になったとか、よく食べるとか言って金をせびってたけど、なんか、私たち、似てないかい。

ちがうのは、宿屋の夫婦はコゼットに水くみさせたりしてこき使うことができたけど、この子どもにお手伝いさせるのは、すごーくむずかしい、ほとんどむり、ってことだ。

そいで、子どもは手紙を書くんである。おじいちゃん。ぼくはほしいおもちゃがあります。

この子ども、人質なんだが、犯人でもあるな。