渚 金素月
あなたはなぜに
そうなのですか?
ひとり渚にすわりこみ
うす青い草株が
芽を吹いて
静かな水は春風にゆれるとき
永遠に戻らないわけではないと
言われた
そんな約束があったのでしょう
日毎渚に
来てうずくまり
心虚ろにもの思いにふけります
永遠に戻らないわけではないと
言われたのは
決して忘れるなという頼みですか
「キム・ソウォル(金素月)詩集 つつじの花」
訳 林陽子
2100円(本体2000円+税)
2011年3月30日刊行
書肆 青樹社
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詩人の石川逸子さんから、冊子「ヒロシマ・ナガサキを考える」第100号を送っていただく。100号終刊。
「在韓被爆者」(金信煥)という文章は、在韓被爆者の戦後の苦悩と、日本の戦後65年の平和運動の虚ろさとを教えてくれる。
「被爆当時、広島の人口四〇万。軍人が約四万人おったといわれている。朝鮮人も五万人いて、三万人は爆死です。長崎でも同じような状況で、約一割の人口が朝鮮半島出身者だった。このように、被爆者の中に外国人がいたということを、平和運動をする人たちは知らない筈はなかったんです。
調べてみますと、被爆当時、広島には外国人が沢山おりました。(略)それなのに、「日本国民は唯一の被爆国民だ」と言って憚らなかったのです。」
「在外被爆者たちは、治療も補償も受けられないで無視され排除されてきた。一発の原爆で被害を受けた、同じ被害者であるのに、「被害者仲間」から「仲間はずれ」されてしまった。」
「在外被爆者問題というものは、実は日本の国の質が問われている、日本の国のあり様が問われているのです。国に、正義があり、良心があるか否かが問われているのです。」
戦後65年過ぎてまだ終わっていない物語として、ここにある。
4月26日は、チェルノブィリからは25年目なんだけど、それもまだ終わっていない物語だろう。
フクシマは、まだ、はじまったばかり。
これも、長い、長い長い物語になるんだろうか。
「国に正義があり、良心があるか否か」
私は懐疑的だ。
もうすこしはましな、65年を、生きてこれればよかったのに。
ではせめて、もうすこしはましな、これからでありますように。
☆
弟から電話。母さんの好きな花は何だったかと、きいてくる。
墓参りにゆくつもりらしいのは感心なこと。ほかに行くところもないのはせつないこと。母さんが好きな花を私は知らない。なんでも好きだったよ、きっと。