南京三月

1985年3月16日、17日は、南京にいた。
南京大虐殺記念館の建設現場。煉瓦を積みはじめたばかり、という頃。
近くでは遺体の発掘作業も行われていて、散乱する小さな骨片を踏んで歩いた記憶がある。穴のなかから掘り出されている人骨をのぞきこんでいる私たちを、労働者たちが仕事の手を休めて、見ていた。見られている、ということが怖ろしかった。 
本当は虐殺の生き残りのお婆さんに、話を聞かせてもらうことになっていたんだけど、寒い朝で、お婆さんのリューマチが痛むので、中止になった。ほんとに寒い朝だった。

穴のなかの人骨をのぞきこんでいた南京三月底冷えの朝 (野樹かずみ)

上海~南京~蘇州~上海、1週間の旅。連れていってくれた小林先生は2年前に逝去された。一緒に行った学生たちの名前を、もう思い出せない。どこへ行って何を見たのかも。いろんな建物に入ったり、楼に上ったり、したけど。

ひまわりの種とかすいかの種が、安い菓子のように売られていて、そこらじゅうに食べたあとの殻が散らばって(ほとんど敷きつめられて)いた。中国滞在中、毎日りすみたいに齧っていた。